new黒潮が再び北上の気配 (親潮ウォッチ2025/5)

見通し(長期予測)

海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図1はJCOPE2Mによる水深100メートル[1]で5月14日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに赤線を引いています。

2024年は黒潮続流(A)が例年に比べて異常に北上していましたが、今年の2月頃にその部分が暖水渦(B)として取り残される形で、それほど北上しない形で東に流れるようになっていました(「2024年(+2025年1~3月)の親潮を振り返る」参照)。

しかし、ここにきて黒潮続流(A)が再び北上しつつあるようです(図5参照)。今後の予測(図2~3)でも、黒潮続流が北上気味になっています。

2024年に、親潮の南下をさまたげていた暖水渦(C)は弱まりつつありますが、代わりに暖水渦Bが北海道南東に移動し、親潮の南下をさまたげそうです(図2~3)。

日本海では、日本海北部で水温5度線の分布が平年に近づいていますが(図1)、今後は平年よりも広がる予測です(D)。

図4は2025年5月14日から7月23日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: JCOPE2Mによる2025年5月14日の水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(矢印)。赤色が5°Cより高い黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が5°Cより低い親潮の影響を受けた冷たい水温。親潮の影響を受けている範囲の指標として水温5°Cに太い赤線を引いた。青線は1993-2020年平均の水温5°C線で平年の親潮の影響範囲。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし2025年6月23日の予測。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2025年7月23日の予測。

 


図4: 図1に対応する2025年5月14日から7月23日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

短期予測

長期予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)による20日予測のアニメーションを、YouTubeに1週間に一度の間隔で掲載しています。親潮ウォッチの更新は月に一回ですが、一週間に一度の予測のアニメーションも参考にしてください。

今月のハイライト: 黒潮続流と親潮の変化

JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト (解説は「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」) 。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T 1ks 約1kmやJCOPE-T DA 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。

図5は、4月19日(左)と5月20日(右)の「ひまわり」観測の海面水温です。

4月よりも5月のほうが夏に近いので、全体的に水温が高いことは自然です。

注目すべきはその分布です。黒潮続流に由来する高い水温(A)が北上しているようです(茨城県ぐらいであったものが福島県ぐらいまで北上)。

暖水渦Bも、北上しつつ東北沿岸に近づき、親潮が南下しにくくなってきているようです。

Fig5

図5:2025年4月19日(左)と5月20日(右)一日平均の人工衛星「ひまわり」。色の幅は-2~31℃とした。

 

 

 


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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

  1. [1]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。