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- JCOPE-T DAによる短期予測(20日先)
- JCOPE3Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは9月9日までのJCOPE-T DAによる短期予測を解説します。短期予測では、黒潮の沿岸への影響がテーマです。
現状と予測
図1・2・3はJCOPE-T DAで計算した8月20日・8月30日・9月9日の黒潮の状態です。
伊豆諸島付近で蛇行が発達しているのと同時に(図1A)、黒潮からちぎれていた渦が吸収される形で四国から紀伊半島南方にも蛇行ができています(図1 A”)。
伊豆諸島付近の蛇行(A)は蛇行こそ大きいものの、八丈島(●)の南に黒潮があったりと、いわゆる黒潮大蛇行とは言えない形です(長期予測の記事参照)。この蛇行は次第に縮小すると予測されています(図2~3)。
蛇行A”が東に進んできたことで、黒潮の本流は紀伊半島・潮岬から離岸しました(図1)。ただし、黒潮から分岐流があり、それは潮岬付近を流れています(図1 E, 図5も参照)。
A”の蛇行が東に移動すると予測されています(図2~3)。長期予測ほど蛇行が発達しないという違いが出ています。
分岐流Eにより潮目が形成され、東海沿岸から関東沿岸は比較的水温が低くなりそうです(図1~3)。黒潮は四国に近づき(D)、九州東からは離れると予測されています(F)(図3)。
図4は8月20日午前10時から9月9日午前9時までの予測のアニメーションです。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間毎の図でアニメーションにしています。

図1: 2025年8月20日午前10時の予測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面温度(°C) 。1度毎の等温線も薄く加えた。青丸(●)が八丈島の位置。クリックすると拡大します。
図4: 2025年8月20日午前10時から9月9日午前9時までの1時間毎の予測のアニメーション。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。
今週のハイライト:紀伊半島付近の黒潮
図5はJAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトで見た、人工衛星「ひまわり」で観測された8月20日の海面水温です。
水温のもっとも高いところから推測される黒潮の本流は紀伊半島・潮岬から離岸しています(黒矢印)。しかし、北に向かって高い水温が沿岸へと伸びており(白矢印)、暖水は黒潮の本流よりも沿岸に近いところにあります。特に、潮岬付近では高い水温と、東海沖の冷水とで潮目ができています(a)。
黒潮が離岸しているにもかかわらず、串本・浦神の潮位差(長期予測記事の図4)が下がりきっていないのは、このような状況(分岐流が接岸している)を反映していると考えられます。
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。