暖水渦の影響で親潮が南下しにくく、水温が高い状態が続くと予測しています。 |
見通し(長期予測)
海洋予測モデルJCOPE3Mで、約2か月先までの予測を行っています。
図1左はJCOPE3Mによる水深10メートルでの、8月19日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。右が同じ日の平年の値です[1]。
黒潮続流は平年よりも高い緯度を流れています。
また、黒潮続流からちぎれた北上した時計回りの暖水渦AとBの存在のため、平年に比べて親潮が南下しにくくなっています。
津軽暖流由来の暖水渦Cも勢力が強いです。
これらの理由から、全体的に今年の水温は平年よりも高くなっています。
今後の予測(図2~3)では、暖水渦Bははっきりしなくなりますが、黒潮続流から暖水渦Dも加わることから、親潮は南下しにくく、高い海水温が続きそうです。黒潮続流も平年より高めの緯度が続くと予測しています。
図4は2025年8月19日から10月20日までの予測をアニメーションにしたものです。
図4: 図1に対応する2025年8月19日から10月20日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
短期予測
長期予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)による20日予測のアニメーションを、YouTubeに1週間に一度の間隔で掲載しています。親潮ウォッチの更新は月に一回ですが、一週間に一度の予測のアニメーションも参考にしてください。
今月のハイライト: 暖水渦とプランクトン
JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト (解説は「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」) 。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T 1ks 約1kmやJCOPE-T DA 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。
図5は、8月19日の「ひまわり」観測の海面水温(左)とクロロフィルa濃度(右、プランクトン濃度の指標)です。
暖水渦のあるAとBの位置でプランクトンが少なくなっています。
一方で、津軽暖流由来の暖水渦Cでは、プランクトンはそれほど少なくないようです。
参考:JAMSTECむつ研究所の金子仁研究員らの研究
海底地形周辺でピンポイントに起こる栄養の湧き出しが広域の生物生産を支える―津軽海峡尻屋崎沖の事例―
- [1]JCOPE3Mは平年のデータが無いため、JCOPE2Mの1993年から2020年の平均で平年の値を計算しています。↩

黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号と2017年2月1日号で解説しています。