伊豆諸島付近と紀伊半島南に蛇行があります。東の蛇行は蛇行こそ大きいものの、黒潮大蛇行らしい蛇行ではなく、長期には保たれなさそうです。西の蛇行は東に進み、大蛇行的になる可能性がありますが、その可能性は先週の予測よりも小さくなっているようです。

 

• • JCOPE-T DAによる短期予測(20日先)

• • JCOPE3Mによる長期予測(2か月先)

を行っています。

ここで10月19日までのJCOPE3Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。

予測

図1は2025年8月18日の状態の推測値、図2・3は9月23日、10月19日の予測です。

伊豆諸島付近にある黒潮の蛇行は一見大蛇行のように見えますが、黒潮が八丈島の北を流れる黒潮大蛇行とは違い、八丈島(●)の南を流れる流路になっています(図1 A)。このような形の蛇行は、黒潮大蛇行と違って維持されにくいことが知られています。予測でも、今後は東に移動しつつ縮小し、大蛇行としては保たれないと予測しています(図2～3)。

一方で、黒潮大蛇行からちぎれていた渦は、九州東で黒潮に吸収されて別の蛇行をつくっています(図1, A”)。この蛇行は東に移動し、潮岬から黒潮が離岸しています。

黒潮が潮岬に近づいているかを観測で見る良い方法として、串本と浦神の潮位差を見るという方法が知られています(「潮岬への黒潮接岸判定法は？: 串本・浦神の潮位差」「今後の黒潮の３つのポイント」参照)。黒潮が紀伊半島に近づくと潮位差は大きくなり、黒潮が紀伊半島から離れると潮位差は小さくなります。図4はその潮位差の時間変化です。2017年に黒潮大蛇行が始まって以来、一時を除いて小さな値が続いていました。しかし、値が大きくなり、潮岬で黒潮が接岸しました。その後、西の蛇行(A”)による離岸によって、串本と浦神の潮位差は再び低めになっています(今週の短期予測記事のハイライトも参照)。

東の蛇行(A)のように、八丈島の南を黒潮を通ると、八丈島の潮位が下がることが知られています(「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの？」参照)。八丈島の潮位は、東京大学大気海洋研究所の藤尾伸三准教授のwebサイト「潮位データを用いた黒潮モニタリング」で見ることができます。図5は、このサイトから八丈島での潮位のこの10年の変化をグラフ作成したものです。黒潮大蛇行が始まって以来、短期間を除き、八丈島の潮位は高い状態が続いてきました。現在は、この潮位が下がっています。しかし、予測通り現在の蛇行Aが消えていくと、八丈島の潮位は再び高くなると考えられます。実際、八丈島の潮位は上昇に転じているようです。

西の蛇行(A”)は蛇行が発達してくると予測されています(図2～3)。蛇行が大きい大蛇行的な流路になる可能性があります。しかし、先週の予測に比べると予測されている蛇行が小さく、潮岬で接岸していることから、黒潮大蛇行になる可能性が小さくなっているようです。このような傾向が続くか、また予測が変わってくるか、まだ引き続き予測を見ていく必要があります。

「今後の黒潮: 考えられる4つのシナリオ」の中では、シナリオ1と2が可能性が無くなっています。シナリオ3の大蛇行再誕生となるかが注目点になります。

図6は、2025年8月18日から10月19日までの予測をアニメーションにしたものです。

 

 

 

 

図6： 2025年8月18日から2025年10月19日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

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JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。