new2026年1月31日までの黒潮「長期」予測(2025年12月4日発表)

接岸流路がしばらく続きそうです。
    • JCOPE-T DAによる短期予測(20日先)
    • JCOPE3Mによる長期予測(2か月先)

を行っています。

ここで来年1月31日までのJCOPE3Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮の蛇行の予測がテーマです。

予測

図1は2025年11月30日の状態の推測値、図2・3は12月31日、来年1月31日の予測です。

黒潮は八丈島の北を流れています(A 図1, 図6も参照)。蛇行が大きくなく、黒潮が八丈島の北を流れていることから、現在の黒潮は非大蛇行接岸流路(直進流路)と判定されます。

今後の予測の注目点は、暖水渦Hと冷水渦Lです。この渦ペアは西に移動すると予測しています(図1~3)。暖水渦Hと冷水渦Lがこのまま西に進んで九州東の黒潮に近づくと、黒潮の流れが変化するきっかけになる可能性があります。ただ、冷水渦Lは段々弱くなるという予測であることから(図3)、今の所あまり大きな変化を引き起こすことはなさそうです。

図4は、2025年11月30日から2026年1月31日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1
図1: 2025年11月30日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面水位(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2
図2: 図1に同じ。ただし2025年12月31日の予測値。

 

Fig3
図3: 図1に同じ。ただし2026年1月31日の予測値。

 


図4: 2025年11月30日から2026年1月31日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

観測で見る黒潮流路

黒潮大蛇行の特徴の一つは、黒潮が潮岬で離れていることです。黒潮が潮岬で離れているかを観測で見る良い方法として、串本と浦神の潮位差を見るという方法が知られています(「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」参照)。黒潮が紀伊半島に近づくと潮位差は大きくなり、黒潮が紀伊半島から離れると潮位差は小さくなります。現在、値は大きくなています。黒潮が潮岬に接岸している証拠となります。予測通りであれば、今後も黒潮は潮岬に接岸し、潮位差は大きい値が続きます。

黒八丈島の南を黒潮が通ると、八丈島の潮位が下がることが知られています(「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」参照)。現在、値は大きくなっており、黒潮が八丈島の北を流れている証拠になります。測通りであれば、潮位は大きい値が続きます。

図5: [上]串本・浦神の潮位差(日平均)の2016年1月1日以降の時系列。データは気象庁から入手した。[下] 2025年以降を拡大。
Fig5
図6: 東京大学大気海洋研究所「潮位データを用いた黒潮モニタリング」「各潮位データの図示」から、「期間: 2025年までの 5年間」・「八丈島」でグラフ作成。単位はセンチメートル。

 

参考: アンサンブル予測

JCOPEでは、上記の予測の他に、予測初期での条件を変えて予測がどれくらいの幅で変わるかという予測実験も行っています(JCOPE3Fによるアンサンブル予測)。下の参考図は2026年1月30日の黒潮の予測です。全24の予測をおこなっています。黒潮が八丈島の北を流れる接岸流路が過半数ですが、八丈島の南を流れる離岸流路を予測しているメンバーもあります。

suppliment
参考図: JCOPE3Fによるアンサンブル予測。2026年1月30日の全24予測。色は海面水位(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。

 



JCOPE3Mは水平1/12度の分解能で2か月先までの予測を行っています。予測は毎日更新されています。