黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?

現在では人工衛星のデータなどいろいろな手段がありますが、ここでは伝統的な手法を紹介しましょう。図1は黒潮が八丈島の南を流れていた1月31日の海面高度(色)と流速(矢印)の推測値です。流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があり、その差は1メートル以上あるのがわかります(このような関係は3/20発表の予測の図1から図5でも確認できます)。このため、黒潮が本州に近づいて八丈島の北を流れれば、八丈島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が八丈島の南を流れる離岸流路が発達すれば、八丈島周辺の海面高度は低くなります。したがって、八丈島の潮位計で海面高度を測ってやることで、黒潮流路の位置を推定することができます。

現実には、潮の干満でも海面高度は変化しますし、気圧が低ければ海面高度は上昇します。そのため潮位計のデータから黒潮の位置を推定するためには、これらの効果を潮位データから除去する処理が必要です。東京大学大気海洋研究所の藤尾伸三准教授のwebサイト「潮位データを用いた黒潮モニタリング」では、この処理済みのデータを見ることができます。図2は、このサイトから八丈島での潮位の今年の変化をグラフ作成したものです。

図2を見ると、今年になって、1月に海面高度が低下、2月に一度上昇し、3月に再び低下していることがわかります。このデータから、1月に八丈島の南を流れる黒潮離岸流路が発達、2月に黒潮が一時的に本州に近づき八丈島に接近、3月に入って再び離岸流路が発達したことが読み取れます。

 

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図1: 八丈島周辺の1月31日の推測値。矢印は流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。

 

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図2: 東京大学大気海洋研究所「潮位データを用いた黒潮モニタリング」「各潮位データの図示」から、「期間: 2015年までの 1年間」・「八丈島」でグラフ作成。単位はセンチメートル。赤で注釈を追記した。