| 親潮は冷たいですが、黒潮系の暖水渦が北海道の南でそれ以上の南下を止めています。今後も親潮系の水と黒潮系の水の勢力争いが続きます。 |
見通し(長期予測)
海洋予測モデルJCOPE3Mで、約2か月先までの予測を行っています。
図1左はJCOPE3Mによる水深10メートルでの、11月23日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。右が同じ日の平年の値です[1]。
黒潮続流は平年よりも高い緯度を流れています。
親潮自体は千島周辺で平年よりも強く冷たくなっています。親潮は北海道南東沿岸まで流れてきていますが、黒潮由来の時計回りの暖水渦Aの存在のため、平年に比べて親潮が東北沿いに南下しにくくなっています。襟裳岬を境に親潮系の水と黒潮系の水がぶつかり、温度差の大きい境目ができています(図5参照)。
今後の予測(図2~3)でも、暖水渦Aと暖水渦Bがくっついた形の暖水渦Cの影響が続くことから、親潮自体は勢いがあり冷たいものの、親潮の岸沿いの南下は限定されそうです。代わりに沖合で南下しそうです(B)。そのため、東北沿岸では高い水温が続きそうです。黒潮続流も平年より高めの緯度を流れる状態が続くと予測しています。特に下流部分(D)の北上が大きそうです。
図4は2025年11月23日から来年1月24日までの予測をアニメーションにしたものです。



図4: 図1に対応する2025年11月23日から2026年1月24日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
短期予測
長期予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)による20日予測のアニメーションを、YouTubeに1週間に一度の間隔で掲載しています。親潮ウォッチの更新は月に一回ですが、一週間に一度の予測のアニメーションも参考にしてください。
今月のハイライト: 親潮と黒潮の勢力争い
JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト (解説は「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」) 。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T 1ks 約1kmやJCOPE-T DA 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。
図5は、2025年11月29日の「ひまわり」観測の海面水温です。襟裳岬を境に、親潮系の水温の低い水と黒潮系の水温の高い水がぶつかっており、温度差の大きい境目ができています。

- [1]JCOPE3Mは平年のデータが無いため、JCOPE2Mの1993年から2020年の平均で平年の値を計算しています。↩
黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号と2017年2月1日号で解説しています。
親潮系と黒潮系の水の勢力争い(親潮ウォッチ2025/11)