3月25日号の黒潮予測を念頭に、地球深部探査船「ちきゅう」の掘削地点の流速については以下のような見通しをもってます。
現在の黒潮の状態とイラストでしめすと、図1aのようになっていると推定しています。黒潮を南に押し下げていた離岸傾向hが東に移動したことで、黒潮は「ちきゅう」掘削地点に近づき、流速が大きくなっていると見ています。実際に掘削が始まると「ちきゅう」から流速データが送られてきますので、本当にそうなっているか検証する予定です。
現在、四国・足摺岬から四国・室戸岬にかけて、離岸傾向jが存在し、黒潮を南に押し下げています(図1a)。これが下流に移動してくると(図1b)、黒潮が「ちきゅう」の掘削地点から離れ、流速低下をともなう急激な流速変化が起こる可能性があります。このため、離岸傾向jがどのように「ちきゅう」の掘削地点に近づいてくるのかが、これからの予測のポイントです。この連載でも、様々なデータを使って離岸傾向jの様子を見ていきます。
図2は、連載第2回で紹介したアンサンブル予測KFSJによる、「ちきゅう」掘削地点での海面(深さ0m)での流速(青線)と流れの向き(緑線)の予測です。20のアンサンブルメンバーで計算しているので、予測結果の線が20本づつあります。この図は、3月27日に更新された「ちきゅう」のための海流予測特別サイトで見ることができます。
図2の流速(青線)を見ると、図1aで見たように黒潮が「ちきゅう」掘削サイトに近づいているため、3月28日現在、どの線も流速がピークになっていると予測しています。
その後、流速は次第に下降していくと予測していますが、4月にはいくつかの青線が流速の急激な下降を予測しています。同時に、流れの向きをしめす緑線もいくつか急激に変化しています。これが図1bで見た、離岸傾向jの影響です。流れが急速に変化する時期は予測によってばらばらですし、あまり流速が変化しないという予測の線もあります。つまり、まだ予測に幅があることに注意する必要があります。
「ちきゅう」のための海流予測の連載記事一覧はこちら。
この連載では、流れの速さの単位として船舶でよく使われるノット(2ノットは約1メートル毎秒)を使用します。
「ちきゅう」のための海流予測KFSJの特別サイトはhttps://www.jamstec.go.jp/jcope/kfsj/です。KFSJついては連載第2回で紹介しました。
「ちきゅう」の観測の様子に関しては「ちきゅう」公式twitterを参照。