new2025年8月12日までの黒潮「長期」予測(2025年6月11日発表)

黒潮大蛇行から渦がちぎれて蛇行が小さくなった後、予測どおり蛇行は再発達してきました。ただ長期には保たれなさそうです。黒潮が潮岬に接岸する兆候があらわれ始めました。

高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、

を行っています。

ここでは8月12日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。
(黒潮大蛇行の予に集中するため、しばらく短期予測の解説は休みます。)

予測

図1は2025年6月3日の状態の推測値、図2・3は7月12日、8月12日の予測です。

気象庁が5月9日に、7年9か月続いた黒潮大蛇行が終息する兆しと発表しました。

大蛇行から渦がちぎれて(A’’) 、黒潮大蛇行の蛇行が大幅に小さくなっていましたが、蛇行が東に移動しながら再発達していました(図1 A)。一見、大蛇行の流路に再び戻ってきているように見えますが、紀伊半島・潮岬から黒潮が遠ざかる黒潮大蛇行とは違い、潮岬に黒潮が近づいています(図1)。

黒潮が紀伊半島に近づいているかを観測で見る良い方法として、串本と浦神の潮位差を見るという方法が知られています(「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」「今後の黒潮の3つのポイント」参照)。黒潮が紀伊半島に近づくと潮位差は大きくなり、黒潮が紀伊半島から離れると潮位差は小さくなります。図4はその潮位差の時間変化です。2017年に黒潮大蛇行が始まって以来、一時を除いて小さな値が続いていました。気象庁が黒潮大蛇行が終息する兆しと発表とした後も小さい値が続いていました。しかし、ここにきて値が大きくなってきました(図5)。この傾向がこのまま続けば、黒潮大蛇行の特徴がまた一つ無くなることになります。

再発達した蛇行は八丈島()を通り越すような形になっており(図2 A)、このまま東進して、大蛇行としては保たれないと予測しています。

 

今後の黒潮: 考えられる4つのシナリオ」の中では、シナリオ1は可能性が無くなっています。予測ではシナリオ2もなく、シナリオ3か4ということになります。

先の予測では(図2~3)、ちぎれた渦(A”)が黒潮に作用して別の蛇行(D)を作るというシナリオ3の変型のような予測になっています。しかし、これはまだ先の予測であり、今後変わる可能性が大きいです。まずは今の蛇行が八丈島()を通り越し、黒潮が潮岬に近づくことで、シナリオ2が無くなるかどうかが現在の注目点になります。

図5は、2025年6月3日から8月12日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: 2025年6月3日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面水位(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2025年8月12日の予測値。

 

Fig4

図4: [上]串本・浦神の潮位差(日平均)の2016年1月1日以降の時系列。データは気象庁から入手した。[下] 2025年以降を拡大。


図5: 2025年6月3日から2025年8月12日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。



JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。