連載第3回「3月28日現在の見通し」で、黒潮を南に押し下げる離岸傾向jがどのように「ちきゅう」の掘削地点に近づいてくるのかが予測のポイントだと書きました(図1イラスト)。今回は、その離岸傾向jが今どこまで近づいているかを見てみましょう。
図2は、気象衛星「ひまわり8号」からJAXAが作成した3月28日の海面水温の分布です(※1)。水温が高くなっている帯が黒潮が流れている所です(図1のイラストも参照)。海面水温の図から、黒潮は潮岬に接岸し、「ちきゅう」の掘削地点も黒潮上にあることがわかります。
一方、四国沖では、黒潮の温度の高い帯は、足摺岬では完全に岸から離れ、室戸岬でも離れかけていることがわかります。つまり、黒潮を南に押し下げる離岸傾向jは四国・室戸岬あたりまで達していると言えそうです。
四国沖には、黒潮牧場ブイと呼ばれるブイ(位置は図1,2を参照)で流速が観測されているので、そのデータも確認して見ましょう(※2)。図3は、四国・足摺岬沖に位置する黒潮牧場13号ブイ(図左)と、四国・室戸岬沖に位置する10号ブイ(図右)で測られた海面近くの海流の3月1日から3月29日までの1日毎の時間変化です。縦軸が日付になっており、矢印は、方向が流れの向き、長さが流れの強さになっています。折れ線グラフは東西向きの強さで、赤で塗っているのが東向きを意味しています。黒潮が接岸し近づくと流速が大きくなり、黒潮が離岸し遠ざかると流速が小さくなります。接岸・離岸の変化は上流から下流に移動する性質があるので、流速の増減も上流(足摺岬沖・13号ブイ)から下流(室戸岬沖・10号ブイ)の順に変化します。
13号ブイの流速を見ると(図3左)、3月16日頃は東向きで強かった流速が、3月19日頃から弱まり始め、西向き(青塗り)にまで変化してしていることがわかります。これは、黒潮が13号ブイ付近を流れていて東向きに大きかった流速が、離岸傾向jによって、黒潮が離れ、流速が弱まったためです。その後、流速が大きかった10号ブイでも、3月27日頃から流速が小さくなっています。つまり、黒潮牧場のブイの流速からも、離岸傾向jが室戸岬付近まで達していることがわかります。
※1
「ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら。
※2
過去の黒潮牧場ブイのデータを使った解説一覧はこちら。
「ちきゅう」のための海流予測の連載記事一覧はこちら。
この連載では、流れの速さの単位として船舶でよく使われるノット(2ノットは約1メートル毎秒)を使用します。
「ちきゅう」のための海流予測KFSJの特別サイトはhttps://www.jamstec.go.jp/jcope/kfsj/です。KFSJついては連載第2回で紹介しました。
「ちきゅう」の観測の様子に関しては「ちきゅう」公式twitterを参照。