2017年10月6日から12月7日の予測(10月11日発表)

黒潮は、東海沖で大きく蛇行しています(黒潮大蛇行)。東海沖の蛇行のために、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています。蛇行の東側から沿岸に黒潮から暖水が入りやすくなっています。四国・足摺岬では接岸しています。黒潮大蛇行は継続するでしょう。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています。ここでは2017年10月6日から12月7日までの予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した10月6日と10月11日の黒潮の状態です。

黒潮は東海沖で大きく離岸しています(図1,2)。気象庁と海上保安庁は、2005年8月以来12年ぶりに黒潮が大蛇行しているとみられると9月29日に発表しています[1]大蛇行にともない、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています。大蛇行の東側から、東海沿岸沿いに西向きに暖水が入りやすい状況です(図1,2)。

房総半島沖では黒潮が接岸しています(接岸傾向w[2]、図1,2)。

四国・足摺岬では接岸しています(接岸傾向c、図1,2)。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した10月6日の推測値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 10月11日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5・図6は10月18日・10月25日・11月8日・12月7日の予測です。

東海沖の黒潮大蛇行は成長しながら継続しそうです(図3~6)。紀伊半島・潮岬での離岸も継続するでしょう(図3~6)。八丈島付近では黒潮の一部のみ一時期八丈島の南を流れる可能性がありますが(図6)、八丈島の北を流れる流路が継続しそうです(図3~6)。黒潮大蛇行の今後については次の節で詳しく見ています。

足摺岬では、小刻みに離岸・接岸しながらも、接岸が基調になると予測しています(図3~6)。室戸岬と房総半島沖では接岸・離岸と変化するでしょう(図3~6)。

図7は、10月6日から12月7日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig3

図3: 10月18日の予測値。

 

Fig4

図4: 10月25日の予測値。

 

Fig5

図5: 11月8日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 

Fig6

図6: 12月7日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 



図7
: 2017年10月6日から12月7日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮の大蛇行は今後どうなるか?

この欄では黒潮大蛇行の今後を検討します。(1)蛇行が大きい(2)紀伊半島・潮岬での離岸(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。気象庁と海上保安庁が黒潮大蛇行を発表した時の判定基準[1]は(1)と(2)のみですが、(3)も満たされると典型的な大蛇行流路として長期間持続しやすいとされているので、(3)にも注目します。特徴を一つずつ見てみましょう。

蛇行が大きいというのは北緯32度(赤点線)以南まで蛇行するというのが目安になります[3]。現在、黒潮は北緯32度以南まで蛇行しており、蛇行は大きいです(図1,2)。JCOPE2Mは、蛇行がさらに大きくなると予測しています(図3~6)。

紀伊半島・潮岬での離岸は続いています(図1,2)。潮位計の観測を利用して黒潮の流路を確認してみましょう。黒潮親潮ウォッチでしばしば使っている東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のデータを今回も使います。「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のサイトから、黒潮の流路情報に進み、「期間: 2017年までの1年間」を選ぶと、図8のような時間変化のグラフが出てきます。

図8の一番上のグラフは、串本・浦神の潮位差です。串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります[4]。図を見ると、8月中旬以降、串本・浦神潮位差が安定して小さくなっています。潮岬で黒潮の離岸が続いていることをしめしています。予測でも、潮岬での離岸は続きます(図3~図6)。

八丈島の北を流れるという点に関しても、潮位計の観測を利用して黒潮の流路を確認してみましょう。図8の2番目と3番目のグラフは、三宅島と八丈島の潮位の時間変化です。過去の解説で[5]、伊豆諸島付近の黒潮流路を判断するには、八丈島・三宅島での潮位を見れば良いことを説明しました。それは、流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1参照)。このため、黒潮が本州に近づいて島の北を流れれば、島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば、島周辺の海面高度は低くなります。

図8を見ると、9月以降、三宅島でも八丈島でも潮位が安定して高いままです。つまり伊豆諸島付近では黒潮の位置が北上していることを意味します。

先週までの予測では一時的に黒潮が八丈島の南を黒潮が流れる時期がありそうでしたが、今週の予測ではその傾向が弱まっています(図3~6)。

以上のような点を考慮すると、潮位の観測データに黒潮大蛇行が崩れる兆候は無く、予測でも黒潮大蛇行は継続しそうです。今後も潮位データを見ることで、大蛇行が崩れる兆候があるか確認できます。

Fig8

図8: 東京大学大気海洋研究所「潮位データを用いた黒潮モニタリング」から「黒潮の流路情報」で「期間: 2017年までの 1年間」を指定しグラフ作成。単位はセンチメートル。矢印と字で注釈を追記した。

 

  1. [1]黒潮が12年ぶりに大蛇行」(2017/9/29)
  2. [2]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字w,y,が接岸傾向で、青字t,v,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、例えば離岸傾向xが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。
  3. [3]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html
  4. [4]過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら
  5. [5]三宅島水位についての解説一覧はこちら、八丈島水位に関しての解説一覧はこちら


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。