続・海流と生態系の関係は?

人工衛星は海洋の状態を知るための有用な手段ですが、雲が邪魔になり、観測できないことがしばしばです。前回解説した図は、1ヶ月間の間に観測できたデータを寄せ集めて合成した図になります。幸い、ゴールデーンウィーク中の5月5日には晴れ間が広がり、人工衛星MODIS Aquaの良い画像がとれているので(図1)、今回はこれを見てみましょう。

図1下段の海面水温が高いところ(赤っぽい色)が黒潮の流れているところになります。この黒潮から、九州と四国の間に温度の高い支流が伸びています(図中A)。このような支流は黒潮が足摺岬に近づいた時に発達しやすく、急潮(※1)とよばれる現象として、しばしば急激な海流の強さと温度の上昇を伴い、沿岸の漁業に影響を与えます。一方、前回解説したように黒潮には沿岸に比べて栄養塩が乏しいためにプランクトンは支流内では少なく(図1上段A, 青っぽい色)、沿岸の赤潮の解消につながることもあります。

図1には他にも、黒潮(温度が高く、生物生産性が低い)が発達中の小蛇行のために九州南東で岸から離れている様子(図中B)や、東から近づいている反時計回りの循環で渦をまいている様子(図中C)、微小な渦(※2)によって作られる細かな構造(図中D)など、様々な現象がとらえられています。

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図1 人工衛星MODIS Aquaで2015年5月5日13時半頃取得された画像。図上段の灰色または図下段の濃い青は雲によって観測できなかった地点。画像はSeaDASにより作成。[上段]植物プランクトンの濃度(クロロフィルa)。[下段]海面水温。

 

※1 参考資料: 九州大学/応用力学研究所 /東アジア海洋大気環境研究センター海洋力学分野 外洋の海況変動に対する沿岸海洋の応答

※2 微小な渦に関しては、2015年3月13日号解説、あるいは、JAMSTECプレスリリース「北西太平洋の微小な渦が海洋循環へ与える影響を解明」を参照。