毎月、過去1カ月の予測を検証する予定です[1]。今回は3月1日号の、2月23日から予測した3月23日までの結果を検証します。 |
予測と実際
3月1日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。
図1上段は、2月23日から予測した3月23日の黒潮の状態です。図1下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる3月23日の状態です。図2は、同じく予測値(上段)と実際(下段)の比較を、2月23日から3月23日までのアニメーションにしたものです。
3月23日の予測(図1上段)は、実際(図1下段)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸していること、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置することを予測できていました。また、予測を開始した2月23日の時点では黒潮の一部が八丈島の南を流れていましたが、八丈島の北を流れる流路に戻ると予測しており(図1上段)、実際に八丈島の北を流れています(図1下段)。黒潮の蛇行の行方については、毎週の黒潮予測記事でも、気象衛星「ひまわり8号」が観測する海面水温と比較しながら検証しています。
3月1日号では、四国・室戸岬と足摺岬の離岸と接岸の変化が大きくなってくると予測していました。実際図2のアニメーションを見ると、そのとおりでした。ただ、「変化が大きいため、短期はともかく、長期の予測は難しくなっています」と書いて恐れていたとおり、3月23日の時点では予測と実際がずれてきています(図1)。
房総半島沖では、離岸と接岸が繰り返されると予測していました。図2のアニメーションを見ると、予測どおり房総半島沖の黒潮は大きく変化しました。
予測と実際で、違っていた所と合っていたところは、図2のアニメーションでもご確認ください。
図2: 2月23日から3月23日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ
3月1日号では、大蛇行を作る渦は弱くなってくる可能性があると書きました。そこで、大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2014/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。
図3の点線は、3月1日号の予測による冷水面積の変化です。冷水面積(大蛇行を作る渦の強さ)は3月に急落すると予測していました。黒線が実際の値の推定値で、予想とおり小さくなっています。このまま弱くなって黒潮大蛇行の解消に向かうのかが注目されます。
- [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。↩