予測と実際

8月29日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。

図1上段は、8月24日から予測した9月21日の黒潮の状態です。図１下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる9月21日の状態です。図2は、同じく予測値(上段)と実際(下段)の比較を、8月24日から9月21日までのアニメーションにしたものです。

9月21日の予測(図1上段)は、実際(図1下段)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸していること、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置することを予測できていました。一方、八丈島の北を流れる流路が続くと予測していましたが、実際には一部が八丈島の南を流れる流路に一時期なっていました(図2のアニメーション参照)。黒潮の蛇行の行方については、毎週の黒潮予測記事でも、気象衛星「ひまわり」の海面水温などと比較しながら検証しています。

四国・室戸岬で離岸が続くと予測していました。これもその通りでした。足摺岬では接岸かやや離岸と予測していました。やや時期がずれていたものの、ほぼその通りでした。

房総半島沖では、安定した流路が続くと予測しており、実際その通りだったようです(図2の動画参照)。

図1: [上段]8月24日から予測した9月21日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した2018年9月21日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤●は八丈島の位置。

図2: 8月24日から9月21日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ

大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2014/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。

図3の点線は、8月29日号の予測による冷水面積の変化です。上昇を予測していました。実際に上昇しています(黒線)。渦の強さが上昇していることで、黒潮大蛇行が長引きそうな状態になっています。

図3: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)の1日毎の時系列で黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は10⁴平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した実際の値(解析値)。点線が8月24日から9月21日までの予測。参考のために前回の大蛇行が終了した2005年の時の時間変化を薄い線で重ねた。

1. ^[1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、１ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため１ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で１ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば１週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。↩

美山 透

海の変化は、漁業、海運、エネルギー、天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。

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