今回は昨年2018年の黒潮の変化を3つのアニメーションで振り返ります。 |
流れと海面高度
1つめの動画は、黒潮長期予測でおなじみの図を、1年間まとめたものです。
2018年は1年中黒潮が大蛇行していました(「2018年の5大ニュース」参照)。
アニメーション1: 2018年1月1日から12月31日までの黒潮のアニメーション。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。●が八丈島の位置。JCOPE2Mの解析値(観測をとりこんで現実に近いと考えられる推測値)から作成。クリックして操作して下さい。途中で停止することもできます。
流れと海底地形
2つめの動画では、流れと海底地形の関係をみたものです。
黒潮大蛇行は、東海沖に反時計回りの大きな渦ができる現象です(参考図1)。地球上の渦は大きいほど西に進もうとする性質があるので、東向きの黒潮とつりあい、黒潮大蛇行は長期化します。それに加えて、反時計回りの渦の東には南北にのびる伊豆海嶺という海底山脈があり、これも支えとなり、反時計回りの渦が東に流されにくくなります。
反時計回りの渦が伊豆海嶺を乗り越えて、東に移動すると、伊豆海嶺は支えとして働かなくなり、黒潮大蛇行は終わりに向かいます(「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」参照)。アニメーション2に見られるように、2018年の間に何度も黒潮大蛇行が伊豆半島を乗り越えそうな時期がありましたが、そのたび毎に元にもどり、結局2018年はずっと黒潮大蛇行が続きました。11月頃からは伊豆海嶺を乗り越えそうな気配もなくなり、ますます黒潮大蛇行は終わる気配が見えなくなりました。
またアニメーション2では、黒潮は伊豆海嶺の切れ目の海底が深くなっているところを通過しやすい様子も見られます(参考図1の青矢印1,2,3。「なぜ黒潮には異なる流路が存在するの?」参照)。八丈島(参考図の●、アニメーション1の●)の北を通る場合(参考図1の青矢印1,2)は、反時計回り渦の東に伊豆海嶺が位置することになり、黒潮大蛇行は安定です(典型的黒潮大蛇行)。八丈島の南を通る場合(参考図2の青矢印3)は、反時計回り渦が伊豆海嶺を乗り越えつつあり、黒潮大蛇行は不安定になります。
アニメーション2: 2018年1月1日から12月31日までの黒潮のアニメーション。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海底の深さ(メートル)。JCOPE2Mで計算した解析値(観測をとりこんで現実に近いと考えられる推測値)から作成。
海面温度
3つめの動画は、新しい高解像度予測モデルJCOPE-T DA(「JAXAと共同で新しい海洋予測を開始」)の海面水温です。JCOPE-T DAは1時間毎のデータがありますが、ここでは1日平均のアニメーションです。
新しいモデルですので、動画は2018年9月1日からになります。JAXAの人工衛星「ひまわり」観測とJCOPE-T DAの比較するサイトでも、9月1日からの図をみることができます。
夏は全面的に水温が上昇しており、黒潮と周辺の水温の区別がつきにくいですが、冬が近づいて水温が下がるにつれて、黒潮や黒潮大蛇行による冷水渦がはっきり見えるようになります。
アニメーション3: 2018年9月1日から12月31日までの黒潮のアニメーション。色は海面水温(℃)。JCOPE-T DAで計算した解析値(観測をとりこんで現実に近いと考えられる推測値)から作成。
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