毎月、過去1カ月の予測を検証しています[1]。先月の予測以上に黒潮大蛇行が強さを保っています。

予測と実際(長期予測)

今回は2月27日号の、2月22日から予測した3月26日までの結果を検証します。2月27日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。

図1左は、2月22日から予測した3月26日の黒潮の状態です。図１右は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる3月26日の状態です。図2は、同じく予測値(左)と実際(右)の比較を、2月22日から3月26日までのアニメーションにしたものです。

3月26日の予測(図1左)は、実際(図1右)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸していること、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置することを予測できていました。伊豆諸島付近では八丈島の北を流れる流路が続くと予測しており、それも当たっていました。ただし、黒潮大蛇行を作る反時計回りの冷水渦は予測(左)よりも実際(右)の方が強く大きくなっています^[2]。

四国・室戸岬で離岸が続くと予測していました^[3]。これもその通りでした。

2月27日号の予測では、九州東で離岸(小蛇行)が大きくなる可能性があると予測していました(左)。その際、長期予測モデルは小蛇行を大きく予測する傾向があると書いたとおり、実際には予測のような大きな離岸(小蛇行)は発達しませんでした。

 

図2: 2月22日から3月26日までの予測(左)と実際(右)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ(長期予測)

大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2018/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。

図3の点線は、2月27日号の2月22日からの予測による冷水面積の変化です。減少を予測していました。実際(黒線)にはほぼ横ばいか、むしろ上向きでした。渦の強さが保たれていることで、黒潮大蛇行が長引きそうな状態です。

黒潮大蛇行が2017年8月末に始まってから1年7か月たっており、前回2004-2005年(約1年2か月)、前々回1989-1990年(約1年1か月)より長くなっています(過去の黒潮大蛇行についていは「黒潮大蛇行の歴史」参照)。これより長い大蛇行は1986-1988年(約1年8か月）までさかのぼります。

予測と実際(短期予測)

4月5日追記

今回は3月24日から予測した4月2日の予測を検証します。図4上段は、3月24日から予測した4月2日の黒潮の状態です(1日平均)。図4下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる4月2日の状態です。

先週の予測は悪くなかったようです。先月の予測検証に書いたように、短期予測には黒潮大蛇行の東で黒潮が北上し本州にぶつかる位置が西に寄り過ぎる傾向がありました。先週からその傾向を是正する改良を取り入れています。この改良の効果が出ているかは、これからも検証していきます。

1. ^[1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、１ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため１ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で１ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば１週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。↩
2. ^[2]図1右の反時計回り渦の濃い青色は、海面高度が低いことをあらわしており、水温が低いこと、渦が強いことを反映しています。↩
3. ^[3]黒潮大蛇行時の室戸岬沖の黒潮の様子については「黒潮大蛇行時の四国沖の状況」で解説しています。↩