2017年8月末に黒潮大蛇行が始まった後、四国・室戸岬沖では黒潮が大きく離岸してます。足摺岬では接岸またはやや離岸です。 |
大蛇行後の四国沖の状況
昨年に黒潮大蛇行が始まって以来、黒潮は図1のような状況になっています。黒潮大蛇行により黒潮が日本南岸で大きく離岸しているため、その西の端である四国・室戸岬でも大きく離岸しています。一方で、大蛇行が及ばない足摺岬では、接岸または、離岸してもやや離岸程度である時期が多くなっています。
このことは、室戸岬と足摺岬沖に高知県が設置している黒潮牧場ブイと呼ばれるブイによる観測で確かめることができます[1]。室戸岬沖には10号ブイ(●)、足摺岬沖には13号ブイ(●)が設置されています(図1)。
黒潮牧場ブイの観測から
図2は、黒潮牧場10号ブイと13号ブイで測られた海面近くの海流の、2017年6月1日から2018年10月1日までの1日毎の時間変化です。縦軸が日付になっており、折れ線グラフは東西向きの強さで、赤で塗っているのが東向きを意味しています。黒潮が岸の近くを流れると流速が大きくなるので、黒潮が接岸→流速大、黒潮が離岸→流速小という関係があります。接岸・離岸の変化は上流から下流に移動する性質があるので、流速の増減も上流(足摺岬沖・13号ブイ)から下流(室戸岬沖・10号ブイ)の順に変化する傾向があります。2017年6月以前の状況は「観測で見る小蛇行通過(2017年4月から6月初めまで)」で解説しています。
室戸岬で(10号ブイ)では、6月から7月にかけて小蛇行2と呼んでいる蛇行が足摺岬から室戸岬を通過したことで流速が急激に小さくなりました(図2右)。その後、小蛇行2は大蛇行に成長したので、室戸岬沖の流速は回復せず、小刻みに小さい東向きの流れと西向きの流れを繰り返しています。小蛇行2の通過と、その後の黒潮大蛇行の発達については「黒潮大蛇行2017の発生を振り返る」で解説しています。
一方、足摺岬(13号ブイ)では、小蛇行2の通過後は流速が回復し、時々流速が0近くになるものの、それ以外は1ノット以上の大きい流速になっています(図2左)。
室戸岬(10号ブイ)の流速が回復し強い流速が続き始めると、それは黒潮大蛇行が終わりに向かっているシグナルだと考えられますから、今後も流速の変化には注目していきます。