海峡・沿岸環境変動研究
津軽海峡はどんなところ?
津軽海峡は、対馬海峡から日本海を北にのぼってきた暖かい水(対馬暖流)が津軽暖流として太平洋へと抜ける通り道です。また、津軽海峡の東口付近には北太平洋からやってくる冷たい水(親潮)も流れています。つまり津軽海峡は、暖かい水と冷たい水がせめぎ合うところです。多様な環境が狭い範囲にあり、環境変動による影響が大きいと考えられます。
図1
津軽暖流の強さと流軸の季節変動
津軽海峡は、日本海と北太平洋をつなぐ水路であり、その流れは津軽海峡のみならず、その周辺海域の海洋環境に大きな影響を与えます。
解析例)東経141.25度ライン流速東西成分の季節変化
2014年4月と9月の海洋短波レーダーデータからの算出した津軽海峡東部の東西成分表面流の月平均です。津軽暖流による東向きの流れが卓越していますが、4月に比べ、9月では流れは強く、流軸が北に寄っています。津軽暖流の流れ方が季節的に変動していることがわかります。
津軽海峡周辺海域の今
むつ研究所では、地球環境の変動によって日本周辺の海域がどのような影響を受けているかを調べるため、むつ研究所のある下北半島周辺域で観測研究を行っています。下北半島の周辺海域では、今何が起こっているのでしょうか?
津軽海峡の水温変動
関根浜港外の表層水温の変動
陸奥湾内の養殖ホタテ貝のへい死が深刻だった2010年には、太平洋側の関根浜港でも晩夏の水温が平年より3℃ほど高かったことが、下北半島北部でアンコウが不漁となった2014年冬期には平年より4℃ほど低かったことがわかります。その後2年は、逆に冬期の水温が1~2℃ほど高くなっています。
船舶観測
船舶観測の定線①(図1)での水温鉛直断面図。すべて冬期(2月)の観測で得られたデータです。関根浜港付近だけでなく海峡内の海洋環境が年ごとに激変していることがわかります。寒流と暖流のせめぎ合いによる影響が大きいですが、地球環境の温暖化との関わりもありそうです。
津軽海峡の化学環境変動
~むつ市関根浜港での高頻度採水観測~
関根浜港での週一回の高頻度採水観測と船舶での海洋観測により、海の化学環境の変動についても徐々に様子がわかってきました。下北半島沖は通年で主に栄養塩が低めの津軽暖流に支配されています。しかし、2014年冬期の異常冷水イベント時に流入した寒流の沿岸観測は、高濃度の栄養塩をもたらし、同時に突発的な酸性化(pH低下、炭酸カルシウム飽和度の低下)を起こしたことがわかります。
ちぢり浜における生物分布調査
むつ研究所では、むつ市ちぢり浜で市民を交えた沿岸観察会を実施しています。海浜生物の種類や分布の変化を観察して、海水温や海流の勢力などの環境変化を捉える試みを行っています。
ちぢり浜における海藻の分布