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むつ研究所

北太平洋時系列研究

地球温暖化などの気候変化を解明・予測するためには、地球上での炭素循環を理解することが必要です。海洋における炭素循環には、大気海洋間の二酸化炭素輸送、植物プランクトンによる炭素固定(光合成)、固定された炭素(有機物)の表層から深層への輸送と分解、海水の循環過程が関わっていますが、これらの過程は十分に理解されておらず、その定量化が進んでいませんでした。むつ研究所では、海洋における炭素循環の解明などを目的として、北西太平洋に時系列観測点を設け、物質輸送とその変動に関わる観測研究(北太平洋時系列研究)を行いました。
具体的には、時系列観測点に沈降する粒子を捕捉するセジメントトラップ、動・植物プランクトン採取装置、自動海水試料採取装置、自動昇降型水温・塩分・流向流速計(MMP)などの観測機器を係留し、物質の鉛直輸送に関わる情報を収集しました。また、海水中に溶存する全炭酸量(酸を加えて出てくる二酸化炭素の総量に相当)の経年変化・変動を明らかにするための海洋調査も時系列観測点の周辺海域で行ってきました。(2009年度まで)

これらの観測研究を通して、カムチャツカ半島沖(北太平洋亜寒帯域)の時系列観測点 K2、KNOTを中心とした海洋観測等を通して、人類活動によって増加した二酸化炭素(人為起源CO2)が海洋に吸収されることにより海洋酸性化していることを見つけました。

この酸性化の結果は、世界気象機関(WMO)よる2014年に発行された温室効果ガス年報※において、世界で8つしかない外洋域の海洋酸性化の監視サイトの1つとして掲載され、国連気候サミット 2014(9 月 23 日、米国ニューヨーク)で配布されました。


※参考 :WMO(世界気象機関)温室効果ガス年報 第10号
(気象庁ホームページ内へ移動します。)

カムチャッカ沖(北太平洋亜寒帯域)の表層と中層での年平均のpHの変化
表層では、大気中の人為起源CO2の吸収によって、他の外洋域と同じ速度で酸性化が進行していますが、中層では、それに加え、溶存酸素の低下(貧酸素化)の相乗効果により、急速に酸性化が進行しています。