次世代海洋資源調査技術テーマ「既存事業の充実に向けた取組み」に関する公募の結果
国際競争に負けず、民間企業が調査等を実施する際に有効な手法をより多く開発するため、平成27年5月21日付研究開発計画(内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当))にて「海洋資源調査産業の創出に資するものとして、大学等で独自に研究されている鉱床成因論等の技術を用い、海洋資源調査技術を産学官一体で開発する」と記載されました。それに基づき、「既存事業の充実に向けた取組み」として下記の3テーマを設定し海洋研究開発機構より公募を行い、実施する研究代表者および研究課題が決定しました。
合計17件の応募があり、募集締め切り後、海洋研究開発機構に設置した「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)次世代海洋資源調査技術委託研究課題選定・評価委員会」において書類選考と面接選考を実施しました。その結果をもとに次世代海洋資源調査技術のプログラムディレクター(浦辺 徹郎 東京大学名誉教授、(社)国際資源開発研修センター 顧問)および内閣府の了承を経て6件が確定しました。
・テーマ2:新たな海洋資源調査手法の提案
・テーマ3:資源開発に伴う海洋環境の保全や海洋の総合管理に向けた国際標準のあり方に関する提案
1.選考における評価基準
選定における評価基準は以下のとおりです。
○研究開発テーマの目標及び研究開発計画が妥当であるか。特に研究開発期間終了時までに実証が完了するような研究開発目標が組まれているか。
○目標達成に向けた工程表は妥当であるか。
○目標達成に向けた具体的な道筋を示しているか。
○研究開発の実施体制、予算、実施規模が妥当であるか。適切なマネジメント体制が構築されているか。実用化までを見据えた研究開発実施体制となっているか。
○SIP次世代海洋資源調査技術の既存の取組みとの連動等により、実用化・事業化への戦略性があるか。特に、事業終了後も含め、技術開発成果の実用化・事業化に向けて、本テーマで実施された研究開発の結果が海洋資源調査産業の創出もしくは国際標準化に貢献するシナリオが描けているか。
※提案内容が科学的な学理に基づいていることを明確に示して下さい。単なる思いつきではなく、提案に至った根拠となる何らかのデータが示されていることが必要。
2.公募の経緯
公募期間 :平成27年5月27日 - 平成27年6月26日
公募説明会:平成27年6月 8日
書類選考 :平成27年7月 6日
面接選考 :平成27年7月15日
3.採択課題
テーマ1:海洋資源成因研究に基づく鉱床モデルの構築に向けた新たな指標の提案
研究機関名 | 研究代表者名 | 研究開発題目 | 実施概要 |
九州大学 | 石橋 純一郎 | 鉱床モデルの構築に向けた熱水化学反応の解明 | 熱水変質鉱物の産状・分布・化学的性質に着目し、高品位部位の特定や熱水鉱床規模の推定に有効であると考えられる鉱床中心部と周縁部を特徴づける化学的指標を見出して、鉱床モデルに取り込むべき新たな指標として提案する。 それに向けて、観察された地球化学的特徴の変動に対する科学的根拠を示すために、各々の熱水変質鉱物や鉱化流体を形成する熱水化学反応、さらにそれを引き起こす流体の分布と挙動を解明する。 |
高知大学 | 臼井 朗 | レアメタルを含む海底マンガン鉱床の多様性に関する地球科学的研究 | 北西太平洋域のマンガンクラスト・マンガン団塊形成プロセスの時空変動がもたらすマンガン鉱床の性状の多様性を規制する海洋環境要因を解明し、それらの視点に基づく鉱床モデルの構築を通じて未踏査地域の鉱床の性状の推定を迅速かつ効率的に行う指標を抽出する。 |
東京大学 | 中村 謙太郎 | マンガン団塊から読み解くコバルトリッチクラスト-マンガン団塊-レアアース泥相互の成因的関連 | 南鳥島EEZを対象に、これまでSIPでは主要な研究対象とされてこなかったマンガン団塊に着目し、これを従来から個別に成因研究がなされてきたレアアース泥とコバルトリッチクラストに加え、3つの海底鉱物資源の成因とその相互の成因的関連を明らかにする。 それに向けて、主成分・微量元素組成データセットの構築、Os同位体年代決定法による生成年代の決定、独立成分分析の適用による起源成分および生成プロセスの抽出を進める。 |
テーマ2:新たな海洋資源調査手法の提案
研究機関名 | 研究代表者名 | 研究開発題目 | 実施概要 |
高知大学 | 岡村 慶 | 潜頭性熱水鉱床の規模・品位探査に資する物理化学・生物観測技術の創出 | 熱水活動域での海底下熱水循環を具現化する観測網構築のため、 (1)海底下の流体観測技術の開発 (2)熱水噴出孔観測技術の開発 を実施する。そのうえで、本手法を沖縄トラフ伊平屋北海丘における人工熱水噴出孔観測ステーションをモデルサイトとして展開・運用し、開発した機器の有効性を実証するとともに、海底下の熱水循環の動態を直接観測する観測手法を確立する。 並行して、開発を協力することにより、民間メーカーからの市販化および民間企業へのオペレーション技術の移転を進める。 |
テーマ3:資源開発に伴う海洋環境の保全や海洋の総合管理に向けた国際標準のあり方に関する提案
研究機関名 | 研究代表者名 | 研究開発題目 | 実施概要 |
東京海洋大学 | 川邉 みどり | 海洋資源開発による新海洋産業創出に向けた、海洋の総合的な管理に関する研究 | 世界に共通する環境影響評価の原理・原則、海域毎に異なる権利及び義務の様態を明示し、海底鉱物資源開発に伴い生じる条件をクリアする提案を行うとともに、海底資源開発による環境影響評価の社会経済影響評価プロトコルを作成することにより、国際標準になりうる「総合的な海洋管理」パッケージを提案する。 (1)海底鉱物資源開発活動に向けた法制度の検討および法体系における調整 我が国の現行法制を検討し課題を抽出したうえで、沿岸法制度の他海域区分(EEZ、EEZ外、深海底)への適用可能性の検討、国際的な海洋環境保全ルールに立脚する法制度の構築を見据えた日本における国内法整備のあり方の検討および提案を行う。 (2)海底鉱物資源開発活動に向けた社会経済対応の検討 既存産業の経済活動が受ける影響の評価手法、海洋生態系が受ける影響の社会経済的評価手法、海底資源開発の環境影響評価におけるコミュニケーション手法を開発する。 |
横浜国立大学 | 中村 由行 | 資源開発に伴う海洋環境の保全や海洋の総合管理に向けた国際標準のあり方に関する提案 | 深海における生物多様性に配慮した持続可能な資源探査活動を進めるにあたっての環境影響評価の国際標準並びに関連現行法制の海底・域外への適用可能性と諸問題の検討を行う。 また、国連海洋法条約の実施協定策定などの最新の動向を踏まえつつ、我が国の国情・国益にかなう深海における資源探査開発の制度の検討を行う。 |
4.戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)次世代海洋資源調査技術委託研究課題選定・評価委員会委員
区分 | 氏名 | 所属機関・役職 |
委員長 | 浦辺 徹郎 | 東京大学名誉教授、国際資源開発研修センター 顧問 内閣府政策統括官(科学技術政策・イノベーション担当)付 プログラムディレクター ※次世代海洋資源調査技術担当 |
委員 | 浅田 昭 | 東京大学生産技術研究所海洋探査システム連携研究センター センター長、教授 |
浦 環 | 九州工業大学社会ロボット具現化センター センター長、特別教授 |
|
木川 栄一 | 海洋研究開発機構 次世代海洋資源調査技術開発プロジェクトチーム プロジェクト長 |
|
竹内 倶佳 | 電気通信大学 名誉教授 | |
辻本 崇史 | 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 理事 | |
堀田 平 | 海洋研究開発機構 理事 |
以上