2016年10月号:春爛漫の南アフリカ

fig_0

写真:南アフリカのジャカランダ

感染症のプロジェクトで南アフリカを訪れています。写真は研究所で撮ったジャカランダという花です。南半球に位置する南アフリカは春を迎え、紫色の花が辺り一面に咲いています。10月も後半になり、今年も残すところあと2ヶ月です。これからの季節、世界の気温や降水量はどうなるのでしょうか。SINTEX-Fの季節予測によると、今年12月から来年2月は世界の多くの地域で気温が平年より高くなりそうです。また、熱帯の太平洋では弱いラニーニャもどき現象が弱まりながらも続く一方、インド洋では負のインド洋ダイポール現象が終息し平年並みの状態に戻る見込みです。これらが地域の降水にも影響を与えそうです。

今年12月から来年2月の気温と降水量は?

fig_1_201610

図1 2016年12月から2017年2月までの地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は10月1日。

今年12月から来年2月までに予測される世界の気温です。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域で気温は平年より高くなりそうです(図1)。一方で、ブラジル北部、北ヨーロッパ、オーストラリア北部では、気温は平年より低くなりそうです。

fig_2_201610

図2 2016年12月から2017年2月までの降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は10月1日。

次に、今年12月から来年2月までに予測される世界の降水量です。SINTEX-Fの予測によると、中国東部、インドシナ半島、東アフリカでは雨が平年より少ない見込みです(図2)。一方で、ブラジル北部、オーストラリア北部、西アフリカ南部、中央アフリカ西部、アフリカ南部では、雨が平年より多くなりそうです。

また、日本の冬は、気温が平年より高く、降水量が平年より少ない予測となっています。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の予測情報に注意してください。

fig_3_201610

図3 2016年12月から2017年2月までの海面水温の平年差(ºC)。 予測開始日は10月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯域は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらすことが知られています。

SINTEX-Fの予測によると、今年12月から来年2月までの熱帯太平洋は、中央部で水温が平年より低く、西部と東部で高くなるラニーニャもどき現象の状態が弱く続く見込みです(図3)。一方、インド洋ですが、東部で水温が平年よりも高く、西部で低くなる負のインド洋ダイポール現象が弱まり、平年並みの状態に戻る見込みです。

fig_4_201610_2

図4 2016年10月以降に予測される、エルニーニョもどき指数とインド洋ダイポール指数(ºC)。 予測開始日は10月1日。青線が観測値、灰線が9つの異なる初期条件で計算した予測値、赤線が9つのグレーの予測値の平均値。

最後に、世界の気候に影響を与える熱帯域の気候変動現象が今後どのように発達するか、見てみましょう。図4は、熱帯域の現象が最もよく現れる海域で計算された海面水温の平年差になります(図4)。エルニーニョもどき指数は、赤線の予測値の平均をみると、10月はマイナス0.5度を下回りピークとなっていますが、年末にかけて減衰し、弱いラニーニャもどき現象の状態が続くことを予測しています。その後、平年並みの状態に戻りそうです。

一方、インド洋ダイポール指数は、9月にマイナス1度を下回りピークを迎えた後、10月以降は負のインド洋ダイポール現象は減衰する見込みです。その後、年末にかけて平年並みの状態に戻りそうです。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ現象やラニーニャ現象だけでなく、インド洋に発生するインド洋ダイポール現象なども大きく影響を及ぼすことが分かっています。今年12月から来年2月は、太平洋では弱いラニーニャもどき現象の状態が弱まりながらも続く一方で、インド洋では負のインド洋ダイポール現象が終息し平年並みの状態に戻る見込みです。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意して見ていきましょう。

最後になりますが、12-2月の予測を示しているのは、冬という季節の気候を意識しているからです。気候の専門家は、1年のうち4つの季節を春(3-5月)、夏(6-8月)、秋(9-11月)、冬(12-2月)に分けて議論することがよくあります。ちなみに、南半球の12-2月は夏にあたります。