2016年12月号:冬の始まり

写真:横浜研究所の十月桜

12月も後半になりました。比較的暖かいせいか、十月桜がまだ咲いています。花びらをよく見ると、蜂が止まっていました。冬支度をしているのでしょうか。今年も残すところ、あとわずかですね。これからの季節、世界の気温や降水量はどうなるのでしょう。

SINTEX-Fの季節予測によると、今年12月から来年2月は世界の多くの地域で気温が平年より高くなりそうです。また、熱帯の太平洋では弱いラニーニャもどき現象が弱まりながらも続く一方、熱帯のインド洋では負のインド洋ダイポール現象が終息し、平年並みの状態に戻る見込みです。また、オーストラリア北西部では水温が平年より高くなるニンガルーニーニョ現象が発生する見込みです。これらが地域の降水に影響を与えそうです。

今年12月から来年2月の気温と降水量は?

図1 2016年12月から2017年2月までの地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は12月1日。

今年12月から来年2月までに予測される世界の気温です。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域で気温は平年より高くなりそうです(図1)。一方で、アメリカ北部、カナダ南部、ブラジル北部、オーストラリアでは、気温は平年より低くなりそうです。

図2 2016年12月から2017年2月までの降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は12月1日。

次に、今年12月から来年2月までに予測される世界の降水量です。SINTEX-Fの予測によると、東ヨーロッパ、東アフリカ、中国南部、インドネシア、カリブ諸国では、雨が平年より少ない見込みです(図2)。一方で、アメリカ東部、ブラジル、オーストラリア、フィリピン、西ヨーロッパ、南アフリカでは、雨が平年より多くなりそうです。

また、日本は気温が平年より高く、雨(雪)が少ない予測となっています。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の予測情報に注意してください。

図3 2016年12月から2017年2月までの海面水温の平年差(ºC)。 予測開始日は12月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらすことが知られています。

SINTEX-Fの予測によると、今年12月から来年2月まで熱帯の太平洋は、中央部で水温が平年より低く、西部と東部で高くなるラニーニャもどき現象の状態が弱く続く見込みです(図3)。一方、熱帯のインド洋ですが、夏から秋にかけて発生していた負のインド洋ダイポール現象が終息し、平年並みの状態に戻る見込みです。また、オーストラリア北西部では、水温が平年よりも高くなるニンガルーニーニョ現象が発生しそうです。

図4 2016年12月以降に予測される、エルニーニョもどき指数、エルニーニョ指数(ºC)。予測開始日は12月1日。青線が観測値、灰線が9つの異なる初期条件で計算した予測値、赤線が9つのグレーの予測値の平均値。

世界の気候に影響を与える気候変動現象が今後どのように発達するか、気になります。図4は、気候変動現象が最もよく現れる海域で計算された海面水温の平年差になります(図4)。エルニーニョもどき指数は、赤線の予測値の平均をみると、12月はマイナス0.5度くらいですが、徐々に減衰し、弱いラニーニャもどき現象の状態が来年の春まで続きそうです。

一方で、来年の夏くらいからエルニーニョ指数が0.5度を超え始め、エルニーニョ現象が発生する見込みです。もし、2017年にエルニーニョ現象が発生すれば、熱帯の太平洋がここ10数年ほど続いた「地球温暖化の停滞(参考1, )」の原因である長期のラニーニャ現象のような状態から、長期のエルニーニョ現象のような状態に変わった可能性があります。その場合には、これから長期に渡って地球温暖化がより強く現れることになりますから、注意が必要です。

図5 2016年12月以降に予測される、インド洋ダイポール指数とニンガルーニーニョ指数(ºC)。予測開始日は12月1日。青線が観測値、灰線が9つの異なる初期条件で計算した予測値、赤線が9つのグレーの予測値の平均値。

一方、インド洋ダイポール指数ですが、年末にかけてゼロの値に近づき、平年並みの状態に戻りそうです(図5)。その後、来年の夏くらいからインド洋ダイポール指数が0.5度を超え、正のインド洋ダイポール現象が発生する見込みです。また、ニンガルーニーニョ指数は、年末にかけて発達し始め、2月にはプラス0.5度を上回り、ニンガルーニーニョ現象が発生しそうです。ただし、どちらの現象も9つの予測値(灰線)のばらつきが大きいので、今後の予測情報に注意してください。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ現象やラニーニャ現象だけでなく、インド洋に発生するインド洋ダイポール現象なども大きく影響を及ぼすことが分かっています。今年12月から来年2月は、太平洋では弱いラニーニャもどき現象の状態が弱まりながらも続く見込みです。一方で、インド洋は負のインド洋ダイポール現象が終息し平年並みの状態に戻りますが、オーストラリア北西部でニンガルーニーニョ現象が発生する見込みです。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意して見ていきましょう。