2017年5月号:エルニーニョとインド洋ダイポール

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写真:横浜研究所のトチノキ

青空に映える薄紅の花。初夏の陽気に包まれた研究所では、トチノキが鮮やかに花を咲かせています(写真)。気象庁の発表によると、4月の天候は東日本で気温と降水量が平年並で、日照時間が多かったそうです(気象庁:4月の天候)。これから梅雨の季節に入り、蒸し暑い夏が訪れます。今年の夏がどのような天候になるか、気になりますね。

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の6-8月は、ロシア東部やオーストラリア北部を除く世界の多くの地域で気温が平年より高くなりそうです。また、フィリピンやメキシコ、西アフリカでは平年より雨が多く、インドネシア、オーストラリア、インド、中国東部、韓国、ブラジル北部、ペルーでは平年より雨が少なくなる見込みです。

原因の1つとして挙げられる熱帯域の気候変動現象ですが、太平洋では東部で水温が平年より高くなるエルニーニョ現象が発達し、インド洋では東部で水温が平年より低く、西部で高くなる正のインド洋ダイポール現象が強く発達しそうです。これら2つの現象が同時に発生することで、インド洋東部から海洋大陸にかけて対流活動が平年に比べて弱まり、特にインドネシアやオーストラリアでは干ばつが起こる可能性があります。

2つの気候変動現象が同時に発生するのは1997年と2015年以来で、世界の多くの地域で気温が高くなる可能性が出ますので、注意が必要です。

今年の6月から8月の気温と降水量は?

図1 2017年6月から8月までの地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は5月1日。

今年の6月から8月までに予測される世界の気温です。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域で気温が平年より高くなりそうです(図1)。一方で、ロシア東部やオーストラリア北部では、気温が平年より低くなりそうです。

図2 2017年6月から8月までの降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は5月1日。

次に、今年の6月から8月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、フィリピン、メキシコ、西アフリカでは、雨が平年より多くなりそうです(図2)。一方で、インドネシア、オーストラリア、インド、中国東部、韓国、ブラジル北部、ペルーでは、雨が平年より少ない見込みです。

また、日本の6−8月は平年より気温が高めで、西日本で雨が多く、北日本で雨が少なくなりそうです。月ごとに見ると、6月の梅雨は西日本で雨が多く、北日本で雨が少ないのですが、7月以降は高気圧に覆われやすく、全国的に雨が少なく、気温も高めになりそうです(図略)。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の予測情報に注意してください。

図3 2017年6月から8月までの海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は5月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

SINTEX-Fの予測によると、今年の6月から8月まで熱帯の太平洋は、東部で海面水温が平年より高くなるエルニーニョ現象が発達する見込みです(図3)。一方、熱帯のインド洋は、東部の海水温が平年より低く、西部の水温が高くなる正のインド洋ダイポール現象が発達する見込みです。

2つの気候変動現象が同時に発生するのは1997年と2015年以来ですが、どちらの現象がより強く発達するか、今後の気候を予測する上で極めて重要です。というのは、エルニーニョ現象が発生すると、例えば日本の夏は、小笠原高気圧の勢力が弱まり、北日本では不順な天候となる傾向にあります。一方で、正のインド洋ダイポール現象が発生すると、西日本では気温が高くなる傾向にあります。どちらの現象がより強く発達するかで、日本の夏の天候への影響が異なってきますので、注意が必要です。

それでは一体、2つの気候変動現象は今後どのように発達していくのでしょうか?

図4 2017年5月以降に予測される、エルニーニョ指数とインド洋ダイポール指数(ºC)。予測開始日は5月1日。青線が観測値、灰線が9つの異なる初期条件で計算した予測値、赤線が9つのグレーの予測値の平均値。

そこで、2つの気候変動現象が最もよく現れる海域で平均した海面水温の平年差を見てみましょう。エルニーニョ指数を見ると(図4上段)、6月にはエルニーニョ現象の発生の目安となる0.5度を超え、9月には1度を超えて発達し、冬にピークに達する見込みです。エルニーニョ現象が発生すれば、熱帯の太平洋がここ10数年ほど続いた「地球温暖化の停滞(参考1, )」の原因である長期のラニーニャ現象のような状態から、長期のエルニーニョ現象のような状態に変わった可能性があります。そうすると、これから長期に渡って地球温暖化がより強く現れることになるので、注意が必要です。

一方、インド洋ダイポール指数ですが(図4下段)、5月には1度を超えて発達し、7月には振幅が2度を超え、夏から秋にかけてピークに達する見込みです。強い正のインド洋ダイポール現象にまで発達しそうです。このように、今年の夏はエルニーニョ現象に比べて正のインド洋ダイポール現象が強く発達すると予測していることから、日本の7−8月の天候は平年に比べて高気圧に覆われやすく、雨が少なく、気温が高めになると予測しています。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ現象やラニーニャ現象だけでなく、インド洋に発生するインド洋ダイポール現象なども大きく影響を及ぼすことが分かっています。今年の6月から8月は、太平洋ではエルニーニョ現象が、インド洋では強い正のインド洋ダイポール現象が発達し、特にインドネシアやオーストラリアでは干ばつが起こる可能性があります。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきましょう。

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