2019年2月号:春が待ち遠しい

写真:横浜研究所にある名護のカンヒザクラ

2月なのにサクラ?横浜研究所では名護のカンヒザクラが満開です(写真)。沖縄では1, 2月に咲くそうですが、横浜研究所でも見事に咲いています。今年の冬は予測通り、暖かかったのですね。そろそろ春の足音が聞こえてきますが、これからの季節、日本を含む世界の天候が気になります。

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の3月から5月は、世界の多くの地域で気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アメリカ南部やブラジル東部、中国北東部、ヨーロッパなど一部の地域では気温が平年より低くなりそうです。

また、アメリカ西部やブラジル東部、中国東部、インドネシア、アフリカ南部などでは雨が平年より多く、アメリカ北部やメキシコ南部、ブラジル西部、フィリピン、インド、オーストラリア北部、西アフリカなどでは、雨が少なくなる見込みです。

原因の1つとして、熱帯域の気候変動現象の発達が挙げられます。太平洋ではエルニーニョエルニーニョもどき現象が弱まりながらも続く見込みです。インド洋ではオーストラリア北西冲で海面水温が平年に比べて低くなるニンガルーニーニャ現象が発達する見込みです。これらの影響を受けて、特にオーストラリアでは雨が平年より少なく、気温がより高くなる恐れがあります。

今年の3月から5月までの気温と降水量は?

図1 2019年3月から5月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は2月1日。

今年の3月から5月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アメリカ南部やブラジル東部、中国北東部、ヨーロッパなど一部の地域では、気温が平年より低くなる見込みです(図1)。

図2 2019年3月から5月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は2月1日。

次に、今年の3月から5月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。 SINTEX-Fの予測によると、アメリカ西部やブラジル東部、中国東部、インドネシア、アフリカ南部などでは、雨が平年より多くなる見込みです(図2)。一方で、アメリカ北部やメキシコ南部、ブラジル西部、フィリピン、インド、オーストラリア北部、西アフリカなどでは、雨が平年より少ない予測となっています。

また、日本の春は気温が平年より高くなりそうです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の予測情報に注意してください。

今年の3月から5月までの海面水温は?

図3 2019年3月から5月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は2月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな海面水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

SINTEX-Fの予測によると、今年の3月から5月まで太平洋の熱帯域は、東部で海面水温が平年に比べて高くなる、エルニーニョ現象が弱まりながらも続く見込みです(図3)。このエルニーニョ現象は、熱帯域の中央部でも海面水温が平年に比べて高くなっていることから、エルニーニョもどき現象と混ざったものと考えられます。

インド洋の熱帯域は、東部で海面水温が平年より低く、西部で水温が高くなる、正のインド洋ダイポール現象が昨年の秋まで発達していましたが、この冬には終息し、春も平年並みの状態が続く見込みです。一方、オーストラリア北西沖で海面水温が平年より低くなる、ニンガルーニーニャ現象が発達する見込みです。

図4 2019年2月以降に予測される、エルニーニョ指数とエルニーニョもどき指数(ºC)。予測開始日は2月1日。青線が観測値、灰線が9つの異なる初期条件で計算した予測値、赤線が9つのグレーの予測値の平均値。

それでは、これら熱帯域の気候変動現象が今後どのように発達、衰退していくのでしょうか?そこで、海面水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海面水温の平年差を見てみましょう。エルニーニョ指数を見ると(図4上段)、昨年の秋から冬にかけてピークを迎えた後、少しずつ弱まる予測となっています。エルニーニョ現象の衰退は、他の研究機関の予測結果でも見られます(IRI ENSO Forecast)。また、エルニーニョもどき指数を見ると(図4下段)、昨年の秋にピークに達した後、冬にかけて弱まり、このまま衰退していく予測となっています。

図5 2019年2月以降に予測される、インド洋ダイポール指数とニンガルーニーニョ指数(ºC)。予測開始日は2月1日。青線が観測値、灰線が9つの異なる初期条件で計算した予測値、赤線が9つのグレーの予測値の平均値。

一方、インド洋の気候変動現象ですが、インド洋ダイポール現象の指数を見ると(図5上段)、昨年の12月には発生の目安となる0.5度を下回って終息し、このまま春に向けて平年並みに戻りますが、夏から秋にかけて、正のインド洋ダイポール現象が少しずつ発達していく予測となっています。ただし、予測値のばらつき(図の灰線)が大きいので、今後の予測情報に注意してください。また、ニンガルーニーニョ現象の指数を見ると(図5下段)、今年2月から4月にかけて、ニンガルーニーニャ現象が発達した状態が続く予測となっています。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ/エルニーニョもどき現象だけでなく、インド洋に発生する気候変動現象なども大きく影響を及ぼすことが分かっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきましょう。