2018年11月号:今年の冬の天候は?

写真:オオシマザクラと横浜研究所

もうすぐ12月。横浜研究所では紅葉がピークに達しています(写真)。寒さが少しずつ増して、冬の足音が聞こえてきますね。これから季節は冬に移りますが、日本を含む世界の天候が気になります。

SINTEX-Fの季節予測によると、今年12月から来年2月は、世界の多くの地域で気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アメリカやインド北部、ロシア東部、イギリスなど一部の地域では気温が平年より低くなりそうです。

また、カナダ西部やアメリカ東部、ブラジル東部、中央アフリカ、南アフリカ東部、ヨーロッパ、中国東部、インド北部などでは雨が平年より多く、アメリカ北西部、中央アメリカ、南米北部、オーストラリア、モザンビーク北部、タンザニア東部、北欧西部、ロシア西部、東南アジア南部、フィリピン、インドネシア西部などでは、雨が少なくなる見込みです。

原因の1つとして、熱帯域の気候変動現象の発達が挙げられます。太平洋ではエルニーニョエルニーニョもどき現象が今年12月から来年2月にかけてピークに達する見込みです。インド洋ではオーストラリア北西冲で海面水温が平年に比べて低くなるニンガルーニーニャ現象が発達しそうです。このため、インド洋東部から海洋大陸(注1)にかけて対流活動が弱まり、特にオーストラリアでは雨が平年より少なくなる恐れがあります。

今年12月から来年2月までの気温と降水量は?

図1 2018年12月から2019年2月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は11月1日。

今年12月から来年2月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アメリカやインド北部、ロシア東部、イギリスなど一部の地域では、気温が平年より低くなる見込みです(図1)。

図2 2018年12月から2019年2月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は11月1日。

次に、今年12月から来年2月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。 SINTEX-Fの予測によると、カナダ西部やアメリカ東部、ブラジル東部、中央アフリカ、南アフリカ東部、ヨーロッパ、中国東部、インド北部などでは、雨が平年より多くなる見込みです(図2)。一方で、アメリカ北西部、中央アメリカ、南米北部、オーストラリア、モザンビーク北部、タンザニア東部、北欧西部、ロシア西部、東南アジア南部、フィリピン、インドネシア西部などでは、雨が平年より少ない予測となっています。

また、日本の冬は気温が平年より高くなりそうです。また、日本の北部で雨が平年より少なく、南部で多くなりそうです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の予測情報に注意してください。

今年12月から来年2月までの海面水温は?

図3 2018年12月から2019年2月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は11月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな海面水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

SINTEX-Fの予測によると、今年12月から来年2月まで太平洋の熱帯域は、中央部から東部で海面水温が平年に比べて高くなる、エルニーニョ現象がピークに達する見込みです(図3)。特に、このエルニーニョ現象は、熱帯域の中央部で海面水温がより高くなることから、エルニーニョもどき現象に近いと言えます。

インド洋の熱帯域は、西部で海面水温が平年より高く、東部で水温が低くなる、正のインド洋ダイポール現象が秋まで発達していましたが、この冬には終息する見込みです。一方、オーストラリア北西沖で海面水温が平年より低くなる、ニンガルーニーニャ現象が発達する見込みです。

図4 2018年11月以降に予測される、エルニーニョ指数とエルニーニョもどき指数(ºC)。予測開始日は11月1日。青線が観測値、灰線が9つの異なる初期条件で計算した予測値、赤線が9つのグレーの予測値の平均値。

それでは、これら熱帯域の気候変動現象が今後どのように発達、衰退していくのでしょうか?そこで、海面水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海面水温の平年差を見てみましょう。エルニーニョ指数を見ると(図4上段)、来年2月にピークを迎えた後、少しずつ弱まる予測となっています。エルニーニョ現象の発達は、他の研究機関の予測結果でも見られます(IRI ENSO Forecast)。また、エルニーニョもどき指数を見ると(図4下段)、今年12月にピークに達し、少しずつ弱まる予測となっています。

図5 2018年11月以降に予測される、インド洋ダイポール指数とニンガルーニーニョ指数(ºC)。予測開始日は11月1日。青線が観測値、灰線が9つの異なる初期条件で計算した予測値、赤線が9つのグレーの予測値の平均値。

一方、インド洋の気候変動現象ですが、インド洋ダイポール現象の指数を見ると(図5上段)、11月には発生の目安となる0.5度を下回り、終息していく予測となっています。ニンガルーニーニョ現象の指数を見ると(図5下段)、来年2月から3月にかけて、ニンガルーニーニャ現象の発生の目安となる-0.5度を下回り、発達する予測となっています。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ/エルニーニョもどき現象だけでなく、インド洋に発生する気候変動現象なども大きく影響を及ぼすことが分かっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきましょう。

注1:海洋大陸とは、インドネシアなど、東部インド洋から西部太平洋の海と陸からなる地域のことを指します。海洋大陸では、対流活動が活発で激しい降水を伴うため、対流活動の変動が世界の気候にも影響を及ぼします。JAMSTECは、国際機関と協力して海洋と気象の集中観測を行い、国際キャンペーン(YMC;海大陸研究強化年)に参画しています。