2020年11月号:紅葉の季節

写真:黄色に染まる銀杏と横浜研究所

秋が深まり、紅葉が見頃となりました。横浜研究所では、銀杏が黄色に染まり、たくさんの実が落ちています(写真)。これから寒い冬になりますが、日本を含む世界の天候が気になりますね。

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の12月から来年の2月は、インドやインドシナ半島、アラスカ、カナダ西部、グリーンランド、ブラジル北部を除く、世界の多くの地域で、気温が平年より高くなる見込みです。

また、フィリピンやオーストラリア北部、アメリカ西部、ブラジル、ヨーロッパ北部、ロシア北部などでは雨が平年より多く、中国東部やインドネシア、アフリカ南部、アラスカ南部、アメリカ南部、ヨーロッパ南部、ブラジル東部、ラプラタ盆地などでは、雨が少なくなる見込みです。

原因の1つとして、熱帯域の気候変動現象が挙げられます。太平洋では熱帯域の中央部で海面水温が平年より低くなるラニーニャもどき現象のような状態が続く見込みです。一方で、インド洋では全体で海面水温が平年より高い状態が続く見込みです。

今年の12月から来年の2月までの気温と降水量は?

図1 2020年12月から2021年2月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は11月1日。

今年の12月から来年の2月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです(図1)。一方、インドやインドシナ半島、アラスカ、カナダ西部、グリーンランド、ブラジル北部では、気温が平年より低くなる予測となっています。

図2 2020年12月から2021年2月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は11月1日。

次に、今年の12月から来年の2月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。 SINTEX-Fの予測によると、フィリピンやオーストラリア北部、アメリカ西部、ブラジル、ヨーロッパ北部、ロシア北部などで、雨が平年より多くなる見込みです(図2)。一方で、中国東部やインドネシア、アフリカ南部、アラスカ南部、アメリカ南部、ヨーロッパ南部、ブラジル東部、ラプラタ盆地などでは、雨が平年より少ない予測となっています。

また、日本の冬は気温が平年より高く、南部で雨が少なくなりそうです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の予測情報に注意してください。

今年の12月から来年の2月までの海面水温は?

図3 2020年12月から2021年2月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は11月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな海面水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

SINTEX-Fの予測によると、今年の12月から来年の2月までの太平洋の熱帯域は、中央部の海面水温が平年より低くなるラニーニャもどき現象のような状況が続く見込みです(図3)。この現象は、東部の海面水温が平年より低くなるラニーニャ現象と少し異なります。一方、インド洋の熱帯域は、海面水温が平年より高い状態が続く見込みです。

図4 2020年11月以降に予測される、エルニーニョもどき指数およびインド洋海盆モード指数(ºC)。予測開始日は11月1日。黒線が観測値、その他のカラーの細線と太線が異なる季節予測システムで計算した予測値とその平均値を表す。

それでは、これら熱帯域の気候変動現象が今後どのように発達、衰退していくのでしょうか?そこで、海面水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海面水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョもどき指数(図4上段)を見ると、今年の11月にはマイナス0.5度を下回り、冬にかけてラニーニャもどき現象の状態が続く見込みです。その後、来年の春に向かって指数がゼロ付近まで戻り、ラニーニャもどき現象の状態が徐々に弱まる予測となっています。このような傾向が、他の研究機関の予測結果でも見られています(APEC Climate Center MME)。

一方、インド洋の気候変動現象ですが、インド洋の熱帯域で平均した海面水温の平年差(インド洋海盆モード指数という)を見ると(図4下段)、夏まで0.5度付近を推移し、温かい状態にありました。その後、秋から冬にかけて徐々に減衰し、来年の春にはゼロ付近まで戻り、平年並みの状態に戻る見込みです。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなく、エルニーニョ・ラニーニャもどき現象、インド洋の海面水温変動も、大きく影響を及ぼすことが分かっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきましょう。