2021年2月号:春の気配

写真:横浜研究所に咲く梅の花

皆さま、いかがお過ごしでしょうか?横浜研究所では、梅の花が咲き誇り、春の気配が感じられます(写真)。これから季節が冬から春へと変わります。日本を含む世界の天候が気になりますね。

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の3月から5月は、アラスカやカナダ西部、南米北部、インドシナ半島を除く、世界の多くの地域で、気温が平年より高くなる見込みです。

また、カナダ、ブラジル、フィリピン、中国北部、インドシナ半島、インド、スリランカなどでは雨が平年より多く、アメリカ、ラプラタ盆地、中国南東部、インドネシアなどでは、雨が少なくなる見込みです。

原因の1つとして、熱帯域の気候変動現象が挙げられます。太平洋では熱帯域の中央部で海面水温が平年より低く、西部と東部で高くなるラニーニャもどき現象が減衰していく見込みです。一方で、インド洋の熱帯域は平年並みの状態となりますが、オーストラリアの北西沖で海面水温が平年より高くなる、ニンガルーニーニョ現象が持続する見込みです。

今年の3月から5月までの気温と降水量は?

図1 2021年3月から5月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は2月1日。

今年の3月から5月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです(図1)。一方、カナダ西部やアラスカ、南米北部、インドシナ半島では、気温が平年より低くなる予測となっています。

図2 2021年3月から5月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は2月1日。

次に、今年の3月から5月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。 SINTEX-Fの予測によると、カナダ、ブラジル、フィリピン、中国北部、インドシナ半島、インド、スリランカなどで、雨が平年より多くなる見込みです(図2)。一方で、アメリカ、ラプラタ盆地、中国南東部、インドネシアなどでは、雨が平年より少ない予測となっています。

また、日本の春は気温が平年より高く、九州や沖縄で雨が少なくなりそうです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の予測情報に注意してください。

今年の3月から5月までの海面水温は?

図3 2021年3月から5月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は2月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな海面水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

SINTEX-Fの予測によると、今年の3月から5月までの太平洋の熱帯域は、中央部の海面水温が平年より低く、西部と東部で高くなるラニーニャもどき現象が減衰する見込みです(図3)。この現象は、東部の海面水温が平年より低くなるラニーニャ現象と少し異なります。一方、インド洋の熱帯域は、海面水温が平年並みの状態が続く見込みです。また、オーストラリアの北西沖で海面水温が平年より高くなる、ニンガルーニーニョ現象が持続する見込みです。

図4 2020年2月以降に予測される、エルニーニョもどき指数およびニンガルーニーニョ指数(ºC)。予測開始日は2月1日。黒線が観測値、その他のカラーの細線と太線が異なる季節予測システムで計算した予測値とその平均値を表す。

それでは、これら熱帯域の気候変動現象が今後どのように発達、衰退していくのでしょうか?そこで、海面水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海面水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョもどき指数(図4上段)を見ると、昨年の11月からマイナス0.5度を下回り、ラニーニャもどき現象の状態が続いておりました。しかし、今年の3月から4月にかけてマイナス0.5度を上回り、ラニーニャもどき現象が徐々に減衰する予測となっています。このような傾向が、他の研究機関の予測結果でも見られています(APEC Climate Center MME)。

一方、インド洋の気候変動現象ですが、オーストラリアの北西沖で平均した海面水温の平年差(ニンガルーニーニョ指数という)を見ると(図4下段)、昨年の12月から今年の1月にかけて0.5度を上回り、ニンガルーニーニョ現象が発生しました。しかし、今年の4月から5月にかけて0.5度を下回り、ニンガルーニーニョ現象が徐々に減衰する見込みです。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなく、エルニーニョ・ラニーニャもどき現象、インド洋の海面水温変動も、大きく影響を及ぼすことが分かっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきましょう。