黒潮は再び離岸流路に!

7月10日号7月17日号で解説したように、黒潮の流路は7月に「非大蛇行離岸流路」(別名C型)から「非大蛇行接岸流路」(別名N型)に移行しました(※1)。今週号の現状で述べたように、現在再び離岸流路が発達しているとみられます。図1は伊豆諸島周辺の8月14日の黒潮の状態(予測)です。黒潮は紀伊半島から南東に流れ、八丈島の南を東に流れています。黒潮が八丈島の南を通過することから、離岸流路であると判断しています。ただし、黒潮はその後、北に向かいながら西に一旦戻り、再び三宅島付近で東に向かうという、S字型のカーブ(図1の薄い赤の矢印)の流路をとっており、接岸流路的な要素もあります。

Fig1

図1: 伊豆諸島周辺の8月14日の予測値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。

 

 

このことを観測から確かめてみましょう。7月10日号の解説で、黒潮が離岸流路であるか接岸流路であるかは、八丈島・三宅島での海面高度(潮位)を見れば良いことを説明しました。それは、流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1)。このため、黒潮が本州に近づいて島の北を流れれば、島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば、島周辺の海面高度は低くなります。

では、観測を見てみましょう。図2上段は、7月10日号に引き続き、東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」から、八丈島での海面高度(潮位)の今年の変化をグラフ作成したものです。この図によると、八丈島の海面高度は、6月から7月にかけて上昇しました。これは、7月10号で解説したように、黒潮が接岸流路に移行したからです。逆に、8月になって八丈島の海面高度は低下しています。これは黒潮の離岸流路が再び発達していることを裏付けています。

一方で、三宅島の海面高度(潮位)を見ると(図2下段)、7月に接岸流路になったため海面高度が高くなった後、8月になっても高いままです。これは図1のように黒潮流路がS字型カーブをとっているため、黒潮がまだ三宅島付近を通過していることを裏付けています。

8月になって再び離岸流路が発達することは、7月10日号(予測解説)の段階で予測出来ていました(※2)。それはJCOPE2が、その時点で日本南岸を移動中の小蛇行がもとになって離岸流路が発達することを予測出来ていたからです。

Fig2

図2: 東京大学大気海洋研究所「潮位データを用いた黒潮モニタリング」「各潮位データの図示」から、「期間: 2015年までの 1年間」で、上段は「八丈島」、下段は「三宅島」でグラフ作成。単位はセンチメートル。矢印と字で注釈を追記した。

 

 

では、今後はどう変化するでしょうか?図3は図1に対応するの8月24日の黒潮の予測です。S字型の黒潮流路からちぎれる形で、時計回りの暖水渦が東海沖を西に進むと予測しています。それに伴い、S字型の流路の解消され、三宅島の海面高度も下がるでしょう。離岸流路は安定化し、しばらく離岸流路が継続するでしょう。その様子は今週の予測でも確認してみてください。

Fig3

図3: 伊豆諸島周辺の8月24日の予測値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。

 

 


※1  黒潮の代表的な流路パターンについては2015年2月6日解説「黒潮の位置はどのように変化するの?」を参照。

※2 ただし、離岸流路への移行は7月10号の予測ではやや早めに予測していました。


美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。