2015年台風23号接近で高潮発生

今月上旬に台風23号が接近した際、北海道の根室で高潮が発生し、大きな被害をもたらしました(※1)。高潮とは、台風や発達した低気圧が通過するとき、海面高度(潮位)が大きく上昇する現象です。今回は、この高潮をJCOPEのデータで見てみましょう。ここでは、予測解説で使っているJCOPE2ではなく、高分解能で、潮汐(潮の満ち引きや)や気圧での海面高度の変化を取り入れたJCOPE-Tのデータを使います(※2)。

図1の色は、高潮が発生した10月8日13時(日本時間)の、JCOPE-Tによる海面高度(潮位)の推定値です。台風(低気圧)や潮汐による短い時間で変化する現象に注目するため、10月6日から10日(日本時間)の5日間平均を差し引き、ゆっくりとしか変化しない現象を取り除いています(※3)。図1を見ると確かに根室沿岸で海面高度が高くなっています(濃い赤)。

高潮の発生は「吸い上げ効果」と「吹き寄せ効果」が原因になると言われています(※4)。「吸い上げ効果」というのは、台風や低気圧の中心で低い気圧に吸い上げられるようにして海面高度が高くなる現象です。気圧が1ヘクトパスカル下がると、海面高度は約1センチメートル上昇すると言われています。図1を見ても、気圧の低い台風23号(正確には、10月8日12時に台風23号は温帯低気圧に変わっています)の中心で、確かに海面高度が高くなっています。

一方、「吹き寄せ効果」というのは、強い風が沖から海岸に向かって吹き、海岸に海水が吹き寄せられて、海面高度が上昇する現象です。図1の時は、風が根室に向かって吹く方向(風は低気圧の回りを反時計回りに吹きます)だったので、「吹き寄せ効果」が起こりやすい状況でした。この時、根室は低気圧の中心からは離れていたので、「吸い上げ効果」より「吹き寄せ効果」の方が強かったと推定されます(※5)。

潮汐(潮の満ち干き)も重要です。この時刻は満潮時に近かったので太平洋沿岸の広い範囲で海面高度が高め(赤っぽい色)でしたが、干潮時に近い6時には、逆に広い範囲で海面高度が低め(青っぽい色)になっています。図1の状況では、満潮が高潮による海面高度上昇をさらに押し上げたと言えます。

図3は、10月8日0時から9日23時までの推定値のアニメーションです。「吸い上げ効果」(台風の中心で海面高度が高くなる)、「吹き寄せ効果」(風向きは台風の回りを反時計回り)、潮汐(広い範囲で海面高度が上下)に注目して見て下さい。

 

Fig1

図1: 色はJCOPE-Tによる2015年10月8日13時の海面高度(メートル)の推定値。10月6日から10日の平均(図4右)を引いている。コンターは同時刻の気圧(ヘクトパスカル)。

 

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図2: 10月8日6時の推定値。


図3
: 10月8日0時から9日23時の推定値のアニメーション。クリックして操作して下さい。途中で停止することもできます。

 


参考資料

  1. 釧路地方気象台「平成27年10月7日~10月9日の平成27年台風第23号に関する気象速報(釧路地方気象台)」(pdf) (2015年10月13日)
  2. 根室では2014年にも高潮が発生しています。
    防災科学技術研究所 水・土砂防災研究ユニット 「2014年12月16日-17日の北海道に被害をもたらした低気圧と高潮について
  3. [2017/10/27追記] 次の動画でこの時の高潮が解説されています。「拝啓、予報官X様(64)台風温低化後の高潮」(Team SABOTEN 気象専門STREAM)

 


※1 釧路地方気象台 「平成27年10月8日に発生した台風第23号及び台風から変わった低気圧による根室地方の高潮に関する現地調査報告(第1報)」(pdf) (2015年10月10日)

※2 JCOPE-Tのデータは7月24日号解説「台風の通ってきた海」の図3でも使っています。
JCOPE-Tに関する文献 (英語):
Varlamov, S. M., X. Guo, T. Miyama, K. Ichikawa, T. Waseda, and Y. Miyazawa, 2015: M2baroclinic tide variability modulated by the ocean circulation south of Japan. Journal of Geophysical Research: Oceans, 120, 3681-3710. doi:10.1002/2015jc010739

※3  図4の左図の色は、図1と同じ推定値を、平均値を差し引かないでしめしたものです。3月20日号解説「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」でも見たように、海面高度は海流によっても変化します。例えば、図4左図の南に見える高い海面高度(濃い赤)は、黒潮に関係するものです。今回の解説では、ゆっくりとしか変化しない海面高度を10月6-10日の5日平均として計算し(図4右図)、差し引くことで、図1を得ています。

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図4: 図1と同じ10月8日13時の推定値。左図の色は平均値を引く前の値。右は10月6日から10日の平均。

 

※4 気象庁解説 「高潮

※5 実際に「吹き寄せ効果」が重要だったかを確かめるには、より詳細な解析をする必要があります。


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美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。