黒潮の続き、黒潮続流(親潮ウォッチ2016/02)

水温はどうなった?

2016/1/15号「海も暖冬! (及び最近の親潮)」では、日本周辺の水温が平年より高くなっていたことを解説しました。その後どうなったか見てみましょう。

図1上段は2016/1/15号で解説した1月10日の、図1下段は最近の2月13日の、JCOPE2のデータを用いた、水温が平年(1993から2012年の20年平均)より高いか(赤っぽい色)、低いか(青っぽい色)、を見たものです。

1月10日に比べて2月13日は、全体的にまだ平年より温度が高い(赤っぽい)ところが多いですが、全体的に色が薄くなっていますし、中国大陸近くでは平年より高かった水温が平年より低い水温に変わった場所が見られます。これは1月後半に強い寒気が大陸から流れ込んだ影響とみられます(※1)。

2015年の大きな話題(2015/12/18解説)であった親潮域の高温(図中A)は、引き続き見られます。ただし、1月に比べて2月には高温の範囲は縮小しているようです。この海域については、下の「親潮の現状」で解説します。

日本南岸の低温域(図中B)は1月に比べて2月に縮小しました。1月には黒潮が八丈島の南を通る離岸流路であったのに対し(2016/1/15日号参照)、2月には離岸が縮小しているためです(今週号参照)。

2月には少し弱まっていますが、日本海で高い水温(図中C)が続いています。富山湾で寒ブリが極端な不漁(※2)になったことなどに影響があった可能性があります。

図中Dの地点では、平年よりかなり水温の低く(青っぽい色)なっています。これは海流の影響のようです。次に詳しく見てみましょう。

Fig1

図1: JCOPE2再解析による海面温度の平年(1993年から2012年の平均)との差(ºC)。[上段]2016年 1月10日。[下段] 2016年2月13日。

※1
参考 気象庁「1月の天候」

※2
富山県・氷見漁業共同組合「今年度の”ひみ寒ぶり”宣言の見合わせについて

 


詳しく見てみよう

図1のAとDの地点付近での、海流の影響をより良く見るために、大気とは直接触れない水深100mの水温が、平年より高いか低いかを見たものが図2cです。海面と同じく、D地点では平年よりかなり温度が低く(青っぽい色)なっています。

海流との関係を見ると、D地点の南には東向きに強い流れが流れています(図2a)。これは黒潮続流と呼ばれる流れです(下で解説)。この黒潮続流の位置を2016年2月13日(図2a)と平年の2月13日(図2b)で比べると、平年に比べて南を流れているのがわかります。黒潮続流をはさんで南側では高温、北側では低温となっているため、黒潮続流が平年よりも南を流れると、温度の高い水が北まで届かず、黒潮続流の北が冷たくなります。D地点で低温が見られるのは黒潮続流の南北位置が一因だと言えそうです(※3)。このように、黒潮続流を見るポイントの1つは、その南北位置です。

Fig2

図2: a) JCOPE2による2016年2月13日の水深100メートルでの温度(色, ºC)と流れ(矢印, メートル毎秒)。b) 平年(1993年から2012年の平均)の2月13日の温度と流れ。c) 2月13日の平年との温度差。

 

※3
厳密には、黒潮続流の強弱の効果も考える必要がありますが、ここでは略します。

 


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図3は、 JCOPEによる2016年2月13日の海面近くの流れの速さを色でしめしたものです(黄色っぽい色が強い流れ)。日本南岸では黒潮が強い流れとして見えています。黒潮を下流にたどると、房総半島沖から岸から離れ、太平洋を東に向かう強い流れが東経160度付近まで伸びていることがわかります。この黒潮の下流に伸びる流れは、黒潮の続きということで、黒潮続流と呼ばれています(※4)。

日本から流れ去る海流ということで、一見、日本の沿岸には影響がなさそうな海流ですが、最近の研究により、日本沿岸の海況や上空の大気に対して大きな役割をはたしていることが明らかになりつつあります(※5)。「黒潮親潮ウォッチ」でも、今後解説していきます。

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図3: JCOPEによる2016年2月13日の海面近くの流れの速さ(メートル毎秒)。

 

※4
英語ではKuroshio Extensionです。「黒潮の延長」といったところでしょうか。

※5
参考資料 新学術領域研究・杉本 周作 (東北大学)「日本東岸沖の海と大気は10年で変わる 〜その原因は黒潮続流にあり!?〜

 


親潮の現状

親潮域(図1,図2cのA地点)の現状を見てみましょう。今は例年親潮の勢力が増す季節です(下の図4の解説も参照)。1月の時点では、親潮の流れは北海道の東にとどまっていましたが(2016/1/15号の図3)、2月13日には北海道の南までのびています(図2a)。しかしながら、平年(図2b)に比べると、親潮の冷たい水は南まで届いておらず、平年より水温の高いところが残っています(図2c)。

9月4日号で 紹介した、親潮の勢力の指標である親潮の面積(図2aの点線領域での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)で見ると(図4の赤線)、例年通り1月から2月にかけて増加しているものの、その値はまだ平年(図4の黒細線)のはるか下、通常の範囲(灰色の範囲)を超えてさらに小さい面積になっています。親潮面積が小さいということは、冷たい水(5度以下)の範囲が狭い、すなわち、親潮域があたたかいことを意味します。

2015年12月に引き続き(2016/1/15号の図6)、JCOPEのデータのある1993年以降で、親潮面積の1月平均は2016年が過去最少でした(図5)。親潮面積の過去最少記録は、2015年5月から連続で続いています。

図4: JCOPE2再解析データから計算した親潮面積の時系列(単位104 km2)。赤線が2015年1月から現在までの時系列。黒細線は平年(1993-2012年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。

図4: JCOPE2再解析データから計算した親潮面積の時系列(単位104 km2)。赤線が2015年1月から現在までの時系列。黒細線は平年(1993-2012年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。

 

図5: 親潮の1月平均面積の各年の比較。単位は104 km2

 


黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 週に2回更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

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美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。