2015年の5大ニュース

黒潮親潮ウォッチでは様々なトピックを扱ってきました。今週は、日本近海の話題(※1)を今年の5大ニュースとしてまとめました。

1) 親潮域の異常なあたたかさ

今年は春頃から(※2)暖水渦が北海道の南東沖に居座り、異常に高い海水温が続きました。黒潮親潮ウォッチでも何回か取り上げてきました(5/22「親潮域があったかくなっているって聞いたけど?」9/4「親潮が記録的なあたたかさ」11/6「続・親潮が記録的なあたたかさ」12/4「北海道・東北沖の高水温続く(11月の親潮)」)。これらの記事で、親潮の面積(水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)は、8月から11月まで、1993年以降過去最少であることを既にお知らせしていますが、さかのぼると過去最少の記録は5月から続いており、まだ当分続きそうです。親潮域の異常は、今年のサンマやサケなどの不漁の一因になった可能性があります(※3)。

2) 黒潮が離岸傾向で推移

2015年の黒潮の流路は、八丈島の南を流れる離岸流の期間が長めでした(黒潮の流路については、2/6「黒潮の位置はどのように変化するの?」4/10「なぜ黒潮には異なる流路が存在するの?」の解説参照)。

まず、1月から7月まで離岸流路が続きました。その様子は、7/17「黒潮離岸流路の開始から終了まで」でアニメーションにまとめました。7月に八丈島の北を黒潮が流れる接岸流路になりましたが(7/10「黒潮は接岸流路に!」)、8月には離岸流路に戻りました(8/14「黒潮は再び離岸流路に!」)。その後、11月まで離岸流路が続き、接岸流路に変わりましたが(11/13「黒潮は(いったん?)接岸流路へ」)、また離岸流路に戻りそうです(次号検証します)。

我々のJCOPE2による黒潮の予測は、今年は離岸傾向が強いということを良く予測できていました(予測検証一覧)。一方で、短期間の接岸流路への変化の予測には課題が残りました(7/31号11/27号予測検証参照)。

離岸流路の時には東京で大雪が降りやすいという話題も取り上げました(2/20「黒潮の位置は天気にも影響を与えるの?」)。今季の冬も、黒潮流路の行方とともに注目です。

3) 夏の猛暑

夏の前半は非常に暑い日が続き(JAMSTECニュース7/24「予測通りにインド洋ダイポールモード現象が発生か?」)、日本周辺の海水温も上昇しました(8/21「海も猛暑!」)。 S字型になるなど黒潮の流路が大きく変化した時期にもあたり(8/14「黒潮は再び離岸流路に!」)、高い水温との組み合わせにより、各地にサメが出現したり(※4)、神奈川や静岡でのシラスの不漁の一因になった可能性があります。

夏の後半は不順な天候と台風の通過のため、親潮域以外の日本周辺の海面水温は低下しました(9/4「親潮が記録的なあたたかさ」)。

4) 台風が毎月発生

今年は1月から12月の全ての月で台風が発生しました。これは1951年の観測史上初の記録です。さらに昨年6月から19カ月連続で発生しており、1964年5月~1965年11月に並ぶ過去最長タイ記録です。黒潮親潮ウォッチでは、7/24 「台風の通ってきた海」では台風が海水温低下に与える影響を(※5)、10/16「台風23号接近で高潮発生」では台風が高潮に与える影響を解説しました。

5) 新しい観測手段が登場

海洋研究開発機構の我々のグループからは、オミズナギドリの位置情報と内航貨物船の航行記録を活用することによって、海流予測の精度が向上するという発表がありました(12/11「オオミズナギドリと内航貨物船がとらえた津軽暖流の渦」)。同じく海洋研究開発機構のむつ研究所からは、津軽暖流のレーダー観測データが公開になりました(10/2「津軽海峡東部海洋レーダーデータサイト「MORSETS」が公開)。

地球観測衛星「ひまわり8号」が運用を開始し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のサイトから空間分解能2km・10分毎の海面水温データが入手可能になりました(10/9「気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮」10/23「離岸流路は続くか?」)。我々のグループは、JAXAとの共同研究のため、ポストドクトラル研究員を現在募集しており、来年度から本格的に「ひまわり8号」のデータを活用していきます。

今年に初めて登場したデータではありませんが、高知沖の黒潮牧場ブイのデータを黒潮親潮ウォッチでは利用してきました(2/13「小蛇行の通過は現場の観測でも見えていたの?」3/6「どうやって室戸岬に黒潮が近づいていると判断しているの?」9/18「宇和海で急潮発生?」)。黒潮の動きを見るのに重要なデータだとわかりましたので、今後の記事でも紹介する予定です。

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※1 世界の海に広げるとエルニーニョの発生が大きな話題でした。参照:JAMSTECニュース11/4「スーパーエルニーニョ現象のこれから 〜2016年後半にはラニーニャ現象が発生か〜」

※2  4月の話題としては、茨城県の海岸に多数のイルカが打ち上げられるという事件がありました(APLコラム4/23「茨城県の海岸に打ち上げられた多数のイルカと海洋異変について」)。

※3 サケの不漁に関してはIBC岩手放送の取材に協力しました。

※4 サメの出現に関してはNHK「クローズアップ現代」の取材に協力しました(9/8・NHKクローズアップ現代「サメに凶暴バチ! 温暖化で危険生物があなたに迫る?」

※5 7/24 「台風の通ってきた海」の、台風9・10・11号により海水面温度が低下する様子のアニメーションは、8月12日放送のフジテレビ「とくダネ!」で使用されました。