「ちきゅう」のための海流予測2 (2)台風通過する

掘削開始、ただし、台風で一休み

9月13日に静岡県清水港を出港した地球深部探査船「ちきゅう」は、掘削地点に到着し、ミッションを開始しています。

図1上段の赤線は、9月13日から18日までの「ちきゅう」の航路です。9月14日には、今回の掘削地点(図の黒★)に達し、その後はその周辺に位置しています。

今回の観測には支援船2隻も参加しています。新潮丸(支援船1)と第八明治丸(支援船2)です。支援船は、「ちきゅう」に物資を補給したり、「ちきゅう」の上流から強い海流が来ないかを警戒したりすることで、「ちきゅう」の観測を助けます。支援船1と支援船2の9月13日から18日の航路は、それぞれ緑線と青線で図1の上段にしめしました。

「ちきゅう」が掘削により最初のコアを採取した後、先週から懸念されていたように、9月20日に台風16号が通過しました。その経緯については「ちきゅう」公式twitter「ちきゅう」船上レポートをご参照ください。図1下段は9月19日から20日の「ちきゅう」と支援船の航路です。支援船は和歌山まで待避し、ちきゅうは掘削地点近くで台風をやり過ごしています。

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図1: 「ちきゅう」(赤線)、支援船1(新潮丸、緑線)、支援船2(第八明治丸、青線)の航路。●がそれぞれの期間のスタート地点で、▲がそれぞれの期間の最終地点。[上段]9月13日から9月18日。[下段]9月19日から20日。

 

「ちきゅう」公式twitterより


台風通過前の状況

台風通過後の海の状況がどうなっていたかは次回見ることにして、今回は台風通過前の海流の状況を支援船のデータから見ることにしましょう。先週号では、黒潮は掘削地点より北に位置して掘削地点には影響を与えず、掘削地点での流速は約1.5ノット前後から次第に弱まっていくと予測していました。

図2は、9月14日の、[左上]支援船1と2の航路、[右上]その航路に対応する緯度位置(縦軸)と支援船で観測された海面近く(深さ15m)の流速の大きさ(ノット、横軸)、[下]1日の中での時間(横軸)と流速(ノット、縦軸)を見たものです。

支援船1(緑線)はこの日は掘削地点に立ち寄った後、室戸崎に向かっています。途中、北緯33度を横切ったところで流速が4ノット近くになり最大になっています。このことから、室戸崎沖では、この緯度のあたりに黒潮が位置することがわかります。

一方、支援船2は、掘削地点のやや北西に到着し、その後はその位置にとどまり、流速を監視しています。12時から24時までの平均流速は1.43ノットで、掘削地点では約1.5ノット前後であるという予測と良く一致していました。

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図2: 9月14日の支援船のデータ。[左上]支援船の航路。●がそれぞれの期間のスタート地点で、▲が最終地点。緑が支援船1。青が支援船2。黒★が掘削地点。[右上]対応する緯度(縦軸)と流速(ノット、横軸)。[下]流速(ノット)の時系列。

図3は、9月18日に対応する図です。この日、支援船1は和歌山に向かってます。途中、潮岬付近で強い流速を観測しています。このことから、黒潮は潮岬付近を流れていることがわかります。一方、支援船2は、掘削地点付近で観測を続けていました。この日の流速の平均は約1.10ノットでした。9月14日より弱まっており、流速は次第に弱まっていくという予測も当たっていたようです。

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図3: 図2と同じく、ただし9月18日の図。


今後の見通し

掘削地点周辺の海流予測は、「ちきゅう」のための海流予測特設サイトで毎日更新し、公開しています。

二つの予測モデルJCOPE-T-JCWJCOPE-T-EASによる、台風の影響が落ち着いた8月25日12時における海面での流速分布の予測値を見ると(図4)、黒潮は依然として北に位置して、掘削地点()には影響を与えそうにありません。また、先週は掘削地点での流速をやや速くしていた沖合に時計回りの循環は、東または西に移動して、掘削地点での流速は小さくなっています。

Fig4

図4: 9月25日12時(日本時間)の海面での流速(ノット; 矢印は海流の向きと強さ; 色は海流の強さ)(2016/9/21号の予測より)。(上段) JCOPE-T-JCW 。(下段) JCOPE-T-EASが掘削地点。白い記号は風向きと強さ。

 

掘削地点での流速の予測時系列(図5)を見ると、台風16号が通過した9月20日の後しばらくは海流の強さの震動が続いてると思われますが(次回検討します)、次第に落ち着いてきます。その後は海面での海流(赤線)は1ノット弱で、次第に弱まっていくと予測しています。

Fig5

図5: 掘削地点での流速(ノット)の予測の時間変化(2016/9/21号の予測より)。深さごとに色が分かれており、赤が海面での流速。クリックすると図が拡大。(上段) JCOPE-T-JCW。(下段) JCOPE-T-EAS


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この連載では、流れの速さの単位として船舶でよく使われるノット(2ノットは約1メートル毎秒)を使用します。
「ちきゅう」のための海流予測特別サイトはhttp://www.jamstec.go.jp/jcope/vwp/chikyu.2016.09/です。
「ちきゅう」の観測の様子に関しては「ちきゅう」公式twitter船上レポートを参照。