JCOPEのホームページでは、黒潮親潮ウォッチで紹介している図以外に、様々な解析・予測画像を週に2回[1]更新し、公開しています。この解説では、連載「JCOPE2解析・予測画像の見方」の続きで、その解析・予測画像の見方を説明します。
「JCOPE2解析・予測画像(英語)」のページに移動すると(移動方法は「JCOPE2解析・予測画像の見方(1)」参照)、それぞれの日付毎にいくつかの図を見られます。上から順に
- 伊豆諸島周辺の海面水温(等値線)と流れ(矢印)
- 東北・太平洋沖の海面水温(等値線)と流れ(矢印)
- 北海道東北・太平洋沖の水深100メートルの海水温(等値線・色)
- 黒潮域の水深200メートルの海水温(色)と流れ(矢印)
- 北西太平洋(JCOPE2M計算全領域)の海面水温(色)とアニメーション
- 北西太平洋(JCOPE2M計算全領域)の海面高度(等値線・色)
- 東シナ海の海面塩分(等値線・色) (今回)
です。今回は「7. 東シナ海の海面塩分(等値線・色)」の解説です。
気象では気圧が重要なように、海の流れでは海水の圧力が重要です。水の圧力は、対象とする深さの上にある海水の重さ[2]で決まります。水の重さは、海水の量と水温と塩分(海水に含まれる塩物質の割合[3])から計算できます。そのため、塩分は水温と並んで海洋予測モデルの重要な量です。
JCOPEのサイトで、2018年6月29日の日付を選んで、上から7番目の図を見ると、図1のような東シナ海を中心とした図があります。図1の色と等値線でしめされているのは、1日平均の塩分です。赤っぽい色が塩分が高いところ、青っぽい色が塩分の低いところです。
東シナ海の塩分は、塩分の高い黒潮の影響もあり(「黒潮はからく、親潮はあまい」参照)、塩分が高めですが、中国沿岸では塩分が非常に低いところが見られます。これは長江による河川水の流入の影響です。
塩分の分布は流れの変化や、降水・蒸発、長江からの河川水量によって変化します。例えば、図2の2017年12月28日の図では、長江の影響による低塩分水の広がりは図1に比べて小さくなっています。長江の影響による低塩分水の広がりは好・不漁や日本沿岸へのクラゲの出現に影響していると言われています[4]。
- [1]2016/12/16号解説参照。↩
- [2]正確には気圧も加わります。↩
- [3]塩分の定義は実は単純ではありません。2016/8/5号で紹介した「海の教科書」や「新しい海水の状態方程式と新しい塩分(Reference Composition Salinity)の定義について」(河野健, 2010, 海の研究, pdf )を参照してください。↩
- [4]参照: 木谷浩三 「シンポジウム「長江大洪水と東シナ海等の海洋環境」(西海水研ニュース101号, pdf)↩