「ちきゅう」第370次研究航海始まる
海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」は、高知県室戸沖で、9月10日から11月10日までの期間、研究航海を行います。「ちきゅう」は9月13日に静岡県清水港から出港しました。
研究航海名 | 国際深海科学掘削計画(IODP)第370次研究航海「室戸沖限界生命圏掘削調査(T-リミット)」 |
期間 | 平成28年9月10日開始(9月13日静岡県清水港を出港)~ 平成28年11月10日終了(11月11日高知県高知新港に着岸予定) |
海域 | 高知県室戸岬から南東約120kmに位置する南海トラフのプレート沈み込み帯先端部 (図1を参照) |
プレスリリース | リンク |
特設ウェブページ | リンク |
IODP第370次研究航海「室戸沖限界生命圏掘削調査(T-リミット)」のため、高知県室戸岬の沖合に向けて先ほど9:00に清水港を出港しました!航海の特設ページもぜひご覧ください。https://t.co/RAonBKVqjX pic.twitter.com/pRyH2AyDjD
— CHIKYU 地球深部探査船「ちきゅう」 (@Chikyu_JAMSTEC) 2016年9月13日
参照:【T-リミット開始!海底下の限界生命圏の調査を開始!探査船「ちきゅう」が本日出港!】(2016/9/13 JAMSTEC Facebook)
掘削を行うには、「ちきゅう」は海に対して静止する必要があります。強い海流は「ちきゅう」が位置を保つのを難しくします(※1)。
そこで、わたしたちJCOPEグループは「ちきゅう」のために、前回の365次航海に引き続き(※2)、海流予測情報を提供します。海の一地点の海流予測をするのは難しい挑戦ですが、様々な予測のための情報、予測の注目ポイント、「ちきゅう」の海流との闘い等の点に注目してみてください。
今回の予測情報
今航海のための海流情報予測特設ウェブページを開設しています。
海流予測特設ウェブページ https://www.jamstec.go.jp/jcope/vwp/chikyu.2016.09/
黒潮親潮ウォッチでも、航海期間中は「ちきゅう」のための海流予測のハイライトを解説していきます。
前回(※2)の航海時は、黒潮の予測の不確実さに対応するために、アンサンブル予測KFSJを投入しました。今回の掘削地点は前回ほど黒潮の中心に位置するというわけではないので(下記参照)、黒潮のちょっとした変動よりも風などによる急な変化がより重要になると予想しており、JCOPE-T(※3)という予測モデルを投入します。JCOPE-Tには、黒潮親潮ウォッチで使用しているJCOPE2や、前回の「ちきゅう」のための予測に用いたアンサンブル予測KFSJと比較して、
- 1日平均ではなく、毎時間の予測情報を提供できる。(JCOPE2やKFSJは一日平均)
- 天気予報の更新にあわせて、毎日予測を更新。上記の特設ウェブページでも情報が毎日更新。(JCOPE2やKFSJは1週間に一度)
- 分解能はKFSJ並の高解像度(約3km)。(JCOPE2は約9km)
- 予測期間は短め(約2週間先まで)。(JCOPE2やKFSJは2ヶ月先まで)
JCOPE-Tには設定が異なる2種類のタイプがあり(JCOPE-T-JCWとJCOPE-T-EAS)、両方の情報を提供することで、予測の不確実さに対処します(※4)。
現状と見通し
JCOPE-T-JCWとJCOPE-T-EASの海面での流速を見ると(図1)、黒潮は室戸岬に接岸、または、ほぼ接岸しており(今週の黒潮予測参照)、掘削地点(★)には影響を与えそうにないですが、沖合に時計回りの循環があり、流速がやや速くなっているとみられます。
掘削地点での流速の予測時系列(図2)を見ると、海流の強さは海面では1.5ノット前後で、海流は次第に弱まりそうです。ただし、来週の初め頃に、台風の接近にともなう強い風の影響で(※5)、流速が大きく上下する可能性があります。その振動は台風の通過後もしばらく残りそうです。
※1 参考: National Geographic 日本版【連載】海の研究探検隊 JAMSTEC File8 巨大探査船「ちきゅう」を動かす3人の男 第2回「ちきゅう」、南海トラフで黒潮と闘う
※2 365次航海の時の連載一覧はこちら。
※3 過去のJCOPE-Tを使用した記事一覧はこちら。
※4 JCOPE-T-JCWとJCOPE-T-EASの設定の違いについては連載のなかで解説していきます。
※5 本サイトは海洋予測実験のサイトであり、台風がいつ頃来そうかという情報を提供するものではありません。台風に関しては、最新の気象情報を入手してください。