親潮と黒潮の間・混合水域(親潮ウォッチ2016/11)

水温の全体的な状況

先月は親潮域の暖水に変化のきざしがあるとこを見ました。今回はその続きを見てみましょう。図1は、10月9日(10月18日号で解説)と11月6日の海面水温の平年との差をJCOPE2再解析のデータを用いて見たものです。平年は1993から2012年の20年平均の平均で、それより高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。

10月18日号で解説したように、北海道南東に居座っていた暖水塊は移動を開始して解消方向です。その結果、先月に比べ(図1上段)、今月は例年より暖かいAの領域が弱まってきています(図1下段)。一方で、東北沖の暖水塊はまだ強いです(図1上下段のB)。ただ、強い寒気をともなう天候の影響を受けたこともあり、周辺では例年より冷たい海域が広まっています(図1上段から下段のCの領域)。

日本の南方では例年より暖かい状態が続いていますが(図1下段D)、先月(図1上段D)より弱まっています。

Fig1

図1: JCOPE2再解析による海面温度の平年(1993年から2012年の平均)との差(℃)。[上段]2016年10月9日。[下段] 2016年11月6日。

 


最近の黒潮続流と親潮

海流の影響をよく見るために、2016年11月6日の水深100メートルでの水温と流速を図2左にしめします。比較のために、図2右には、平年(1993から2012年の20年平均)の値をしめします。

2016/07/22号「暴れる黒潮続流」で解説したように、今年の黒潮続流は平年より大きく蛇行していました。そこから切り離された暖水渦(図2左のW1やW2やW3)の形で黒潮から流れてきた水が、東北沖の混合水域(下の解説参照)に流れこんでいます。それが平年(図2右)より水温が高くなる原因となっています。渦が切り離された後の黒潮続流は、蛇行が解消され、平年に近い状態になってきています。

次に親潮を見ると、北海道南東に居座っていて親潮の南下を妨げていた暖水渦が移動したため(図2左のW4)、その隙間をぬって北海道南東まで親潮が先月よりも入りこんでいます。親潮の変化は漁業に影響を与える可能性があり(2016/8/12号「今年のサンマは?」参照)、今後の変化が注目されます。

Fig2

図2: a) JCOPE2による2016年11月6日の水深100メートルでの温度(色, ℃)と流れ(矢印, メートル毎秒)。b) 平年(1993年から2012年の平均)の11月6日の温度と流れ。

 

親潮の勢力の指標である親潮の面積(図2の点線領域での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)の時間変化を見ると(図3の赤線)、昨年は11月にかけて親潮面積が0へと減少したのに対し、今年はむしろ上昇して通常の範囲(灰色の範囲)に近づいています。今後2ヶ月の親潮面積のJCOPE2Mによる予測によると(青線)、さらに平年値(黒線)に近づきそうです。

Fig3

図3: JCOPE2再解析データから計算した親潮面積の時系列(単位104 km2)。赤線が2015年1月から現在までの時系列。黒細線は平年(1993-2012年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。

 

親潮面積を各年で比べると、9月は過去最少だったのに対し、10月の月間平均(図4)は過去2番目です。まだ過去2番目の小ささではありますが、過去最少だった2015年に比べるとかなり大きくなっています。

Fig4

図4: 親潮の10月の月平均面積を各年で比較。単位は104 km2。棒グラフの上の数字は1993年以降の小ささの順番。

 


親潮と黒潮の間・混合水域とは?

親潮と黒潮(その続きとしての黒潮続流)は、直接ぶつかることはまれで、その間は、親潮でもない黒潮でもない海域になっています(図5)。この海域は、親潮から来た水と、黒潮から来た水が混じりあっており、混合水域(Mixed Water Region)と呼ばれています(※1)。栄養が豊富な親潮の水と、水温の暖かい黒潮の水が混じるために、プランクトンが発生しやすく、プランクトンを食べる魚が集まり、世界でも有数な漁場となっています(※2)。また、親潮から冷たい水が来るか、黒潮から暖かい水が来るかで温度が変化しやすいために、2016/7/22号「暴れる黒潮続流」でも解説したように、気候への影響についても関心が持たれている海域です。今年は、上で見たように、黒潮からの暖水の影響が強い年だと言えます。

図5: 親潮と黒潮(黒潮続流)の間の混合水域。

図5: 親潮と黒潮(黒潮続流)の間の混合水域。


※1 混乱水域と呼ばれることもあります。

※2 東北沖の生態系については、海洋研究開発機構の東北マリンサイエンス拠点形成事業もご参照ください


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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 週に2回更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。