2016年11月20日から12月22日の予測を検証します

毎月の月末は、過去1カ月の予測を検証する予定です。今回は2016年11月25日号の、11月20日から12月22日までの予測を検証します。

図1上段は、11月20日から予測した12月22日の黒潮の状態です。11月25日号の予測のポイントは、黒潮は接岸傾向・離岸傾向の通過にともない八丈島付近を南北に移動しそうということでした。実際、この一ヶ月ほど黒潮は八丈島付近を流れており、予測通りでした。また12月末には八丈島の北を流れる接岸流路傾向になると予測しており(下の図4で詳しく解説)、この点でも予測通りでした。一方で、先月の予測では再び離岸が大きくなりそうでしたが(図1上段の離岸傾向j)、現状は予測よりも接岸寄りになっています(図1下段。今週号の黒潮予測も参照)。

11月25日号の予測のもう一つのポイントは、四国・足摺岬から紀伊半島・潮岬にかけて、接岸とやや離岸の小刻みな繰り返しが続きそうということでした。その点は、多少のタイミングのずれを除けば、予測できていたようです。

12月22日頃の実際の様子については、図2の「ひまわり8号」による海面水温[1]も参照してください。八丈島(図の★印)が暖水(赤っぽい色)に包まれており、黒潮が八丈島付近を流れていることがわかります。

図3は2016年11月20日から12月22日までの予測値(上段)と実際(下段)の比較をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: [上段]2016年11月20日から予測した12月22日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した12月22日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。アルファベットc,d..は接岸・離岸傾向の波(12月28日号の現状・予測参照)。

 

Fig2

図2: 「ひまわり8号」が観測した2016年12月22日の一日平均海面水温(°C)。JAXA提供の1時間データを合成した。白の空白は雲がかかって観測できなかった所。赤星()は八丈島の位置。アルファベットf,g,,は図1下段の接岸・離岸傾向の波に対応。

 


図3: 2016年11月20日から12月22日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

kurokatsu


八丈島付近の黒潮流路について、詳しく見てみましょう。過去の解説で[2]、伊豆諸島付近の黒潮流路を判断するには、八丈島での海面高度(潮位)を見れば良いことを説明しました。流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1参照)。このため、黒潮が本州に近づいて島の北を流れる接岸流路であれば、島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば、島周辺の海面高度は低くなります。

図4は、JCOPE2Mで観測値を取り入れて再現した八丈島の海面高度(★による点線)と、その予測(青線、赤線)です。実際の海面高度の変化(★による点線)を見ると、11月末に一旦減少(離岸傾向)してから、12月に入って上昇(接岸傾向)しています。11月25日号の11月20日からの予測でも(青線)、離岸(海面高度の下降)が12月初旬まで続くと予測していたためにタイミングこそ少しずれましたが、一旦離岸(海面高度の下降)してから12月には接岸流路に向かう(海面高度の上昇)ということを予測出来ていました。

最新の予測(赤線、今週号の予測)では、高い八丈島水位が続き、接岸流路的な状況が続くと予測しています。

図4: JCOPE2による八丈島周辺の海面高度の予測の2016年10月1日からの時系列。青線が11月20日からの予測。赤線が12月22日からの予測。★による点線が観測値を取り入れて推測した現実に近いと考えられる値。

 

  1. [1]ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。JAXA提供の「ひまわり8号」海面水温データは、2016年8月31日からバージョン1.2にバージョンアップしています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  2. [2]過去の八丈島水位の解説一覧はこちら