2017年9月28日から11月30日の予測(10月4日発表)

黒潮は、東海沖で大きく蛇行しています(黒潮大蛇行)。東海沖の蛇行のために、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています。蛇行の東側から沿岸に黒潮から暖水が入りやすくなっています。四国・足摺岬では接岸しています。黒潮大蛇行は継続するでしょう。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています。ここでは2017年9月28日から11月30日までの予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した9月28日と10月4日の黒潮の状態です。

黒潮は東海沖で大きく離岸しています(図1,2)。気象庁と海上保安庁は、2005年8月以来12年ぶりに黒潮が大蛇行しているとみられると発表しました[1]大蛇行[2]にともない、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています。大蛇行の東側から、東海沿岸沿いに西向きに暖水が入りやすい状況です(図1,2)。蛇行は先週やや小さくなっていましたが(接岸傾向y[3])、再び大きくなりつつあります(図2、離岸傾向z。図8も参照)。

房総半島沖では黒潮が西から接岸しています(接岸傾向w、図1,2)。

四国・足摺岬では接岸しています(接岸傾向c、図1,2)。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した9月28日の推測値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 10月4日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5・図6は10月11日・10月18日・11月1日・11月30日の予測です。

東海沖の黒潮大蛇行は成長しながら継続しそうです(図3~6)。紀伊半島・潮岬での離岸も継続するでしょう(図3~6)。八丈島付近では黒潮が南北に移動するという予測になっています(図3~6)。黒潮大蛇行の今後については次の節で詳しく見ています。

足摺岬では、小刻みに離岸・接岸しながらも、接岸が基調になると予測しています(図3~6)。室戸岬ではしだいに接岸しそうです(図3~6)。房総半島沖では接岸・離岸と変化するでしょう(図3~6)。

図7は、9月28日から11月30日までの予測をアニメーションにしたものです。

FIg3

図3: 10月11日の予測値。

 

Fig4

図4: 10月18日の予測値。

 

Fig5

図5: 11月1日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 

Fig6

図6: 11月30日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 


図7
: 2017年9月28日から11月30日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮の大蛇行は今後どうなるか?

この欄では黒潮大蛇行の今後を検討します。図8上段と中段は9月25日と10月2日に「ひまわり8号」が観測した海面水温です[4]。黒潮は温度の高い帯として見えています。

図8下段にしめした図は典型的黒潮大蛇行になった場合のイメージです。(1)蛇行が大きい(2)紀伊半島・潮岬での離岸(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。気象庁と海上保安庁が黒潮大蛇行を発表した時の判定基準[1]は(1)と(2)のみですが、(3)も満たされると典型的な大蛇行流路として長期間持続しやすいとされているので、(3)にも注目します。特徴を一つずつ見てみましょう。

蛇行が大きいというのは北緯32度(赤点線)以南まで蛇行するというのが目安になります[5]。9月25日(図8上段)でも黒潮は北緯32度近くを流れており、蛇行は大きいですが、基準をわずかに上回った程度です。気象庁と海上保安庁の発表によると[1]、海上保安庁の測量船「海洋」の観測は、黒潮の流れの最も強いところの南端が北緯31度57分(31.95度)にあることをしめしていました。10月2日になると(図8中段)、蛇行がさらに大きくなっています(岸よりの水温の低い範囲が広がっている)。JCOPE2Mは、蛇行がさらに大きくなると予測しています(図3~6)。

紀伊半島・潮岬での離岸は続いています(黒潮の温度の水温の高い帯と潮岬が離れている。図8上段,中段)。予測でも、潮岬での離岸は続きます(図3~図6)。

八丈島の北を安定して流れるという点に関しては、予測では、黒潮が八丈島の南を流れる時期があり(図3~6)、先週の予測ほどではありませんが、典型的な黒潮大蛇行の形が一時的にややくずれる可能性があります。また、図8を見ると、水温の高い帯が八丈島をつつみこむように流れており、黒潮が八丈島の北を流れているか水温からでは良くわかりません(図8上段,中段)。しかし、先月の予測検証記事で見たように、八丈島で観測されている水位には、黒潮が八丈島の南を流れるような兆候は現在のところ見られていません。また、先月の予測検証によると、黒潮が実際よりも八丈島の南を通ると予測する傾向が、最近のJCOPE2Mの予測にはあるようです。したがって、予測ほどは典型的な大蛇行の形はくずれないかもしれません。

以上のような点を考慮すると、黒潮大蛇行は当面継続しそうです。

Fig8

図8:[上段]9月25日に「ひまわり8号」が観測した海面水温。は八丈島の位置。白くなっているところは雲がかかって観測できなかった所。[中段]同じく10月2日。[下段]典型的大蛇行になった場合の流れのイメージ。

 

  1. [1]黒潮が12年ぶりに大蛇行」(2017/9/29)
  2. [2]先週まで蛇行2と呼んでいた大きな蛇行を、気象庁と海上保安庁の発表にあわせて今週から大蛇行と呼んでいます。
  3. [3]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字w,y,が接岸傾向で、青字t,v,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、例えば離岸傾向xが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。
  4. [4]「ひまわり8号」の海面水温はJAXA提供のデータです。2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照してください。鹿児島県水産技術開発センター和歌山水産試験場からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  5. [5]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。