毎月の月末は、過去1カ月の予測を検証する予定です[1]。今回は2017年8月30日号の、8月25日から予測した9月22日までの結果を検証します。 |
予測と実際
図1上段は、8月25日から予測した9月22日の黒潮の状態です。図1下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる9月22日の状態です。図2は、同じく、予測値(上段)と実際(下段)の比較を、8月25日から9月22日までのアニメーションにしたものです。
8月25日の段階では、伊豆諸島の東に蛇行1、伊豆諸島の西に蛇行2が存在していました。8月30日号では蛇行1は縮小し、蛇行2は継続すると予測しました(図1上段)。その予測は当たりました(図1下段)。蛇行2の発達の大きさも、ほぼ予測通りでした。
ただし、9月の間は黒潮が八丈島の南から八丈島近辺を通過すると予測していたのに対し、実際には八丈島の北を通過していました。9月の間のJCOPE2M予測は、実際よりも八丈島の南を通るという予測する傾向があったようです。
四国・足摺岬では接岸が続くという予測は当たる一方、四国・室戸岬で接岸するという予測は早すぎたようです。黒潮大蛇行の判定に重要な紀伊半島・潮岬の離岸が続くという予測は良くできていました。
予測と実際で、違っていた所と、合っていたところは、図2のアニメーションもご確認ください。黒潮の蛇行の行方については、毎週の黒潮予測記事でも、気象衛星「ひまわり8号」が観測する海面水温と比較しながら検証しています。
図2: 2017年8月25日から9月22日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
潮位計のデータを用いて黒潮流路を確認する
潮位計のデータを利用して黒潮の流路を確認してみましょう。黒潮親潮ウォッチでしばしば使っている東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のデータを今回も使います。「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のサイトから、黒潮の流路情報に進み、「期間: 2017年までの1年間」を選ぶと、図3のような時間変化のグラフが出てきます。
一番下のグラフのKPIは、トカラ海峡における黒潮の緯度をしめす指標で、今回は解説を省略します。
まず、図3の一番上のグラフは、串本・浦神の潮位差です。串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大、黒潮が離岸→潮位差小という関係があります[2]。
図3を見ると、8月中旬以降、串本・浦神潮位差が安定して小さくなっています。潮岬で黒潮の離岸が続いていることをしめしています。
図3の2番目と3番目のグラフは、三宅島と八丈島の潮位の時間変化です。過去の解説で[3]、伊豆諸島付近の黒潮流路を判断するには、八丈島・三宅島での潮位を見れば良いことを説明しました。それは、流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1参照)。このため、黒潮が本州に近づいて島の北を流れれば、島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば、島周辺の海面高度は低くなります。
図3を見ると、9月になると三宅島でも八丈島でも潮位が上昇しています。つまり伊豆諸島付近では黒潮の位置が北上していたことを意味します。予測では八丈島の南を黒潮が流れるという傾向でしたが、観測では今のところその兆候は見えていません。
串本・浦神の潮位差や八丈島・三宅島での潮位の現在の傾向がそのまま続けば、黒潮大蛇行ということになります。今後も注目して見ていきます。
- [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。↩
- [2]過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら。↩
- [3]三宅島水位についての解説一覧はこちら、八丈島水位に関しての解説一覧はこちら。↩