黒潮大蛇行2017の発生を振り返る

2005年以来12年ぶりとなる黒潮大蛇行になっています。黒潮大蛇行にいたる今年の黒潮の動きをまとめました。
2018/2/7追記: 2017年1年間の動きは、2018/1/10号「2017年の黒潮をアニメーションで振り返る」にまとめています。

気象庁と海上保安庁は、2005年8月以来12年ぶりに黒潮が大蛇行しているとみられると発表しました[1]

大蛇行にいたる今年の黒潮の動きをまとめます。今年6月までの黒潮の動きは、前回の2004-2005年の黒潮大蛇行発生と比較しながら、2017/6/21号「2004年の黒潮大蛇行と今年(2017年)の比較」でも見ています。2004年に黒潮大蛇行が発生した時は、小蛇行と呼ばれる前兆現象が黒潮大蛇行へと成長するという関係が1対1だったのに対し、今年の大蛇行では、小蛇行が二つにわかれて大きな蛇行が2回成長するという複雑な経緯をたどりました。以下では2つの大きな蛇行の発達を見ていきます。

典型的な黒潮大蛇行には、(1)蛇行が大きい(2)紀伊半島・潮岬での離岸(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります[2]。蛇行が大きいというのは北緯32度(下の図の赤点線)以南まで蛇行するというのが目安になります。気象庁と海上保安庁が黒潮大蛇行発表した時の黒潮大蛇行の判定基準[1]は(1)と(2)のみですが、(3)八丈島(下の図の)の北を流れるという条件も満たされると、蛇行が伊豆諸島の西にとどまり、典型的な大蛇行流路として長期間持続しやすいとされています。これらの特徴に注目して図を見てください。

蛇行1

前兆としての小蛇行発生

図1は、今年の3月31日の黒潮の様子です。矢印は海流をしめしており、流れが強い(矢印が長い)のが黒潮です。

図1を見ると、九州南東で黒潮が黒潮がカーブを描いて岸から離れています。これは小蛇行と呼ばれる現象です。黒潮大蛇行は急に何も無い所から発生するのではなく、前兆現象として、黒潮上流である九州南東で小蛇行があらわれます。今年も3月に小蛇行があらわれました。

小蛇行は毎年2,3回は発生するような現象なので、全ての小蛇行が大蛇行につながるわけではありません。しかし、条件がそろうと小蛇行が下流に移動しながら成長し、大蛇行につながります。小蛇行が大蛇行につながりやすい条件と、今年の状況については、APLコラム「黒潮大蛇行が12年ぶりに発生—最新の理論で確かめてみると—」で解説しています。

図1の小蛇行が今年の大蛇行につながりますが、今の大蛇行につながる黒潮の動き以前にも、八丈島の南ですでに大きな蛇行が見られていました(図1)。2004年は、大蛇行が始まる前の黒潮が比較的まっすぐ流れていたのに対し、今年は、黒潮の流路が既に大きく変化していたのも異なる点です(2017/6/21号「2004年の黒潮大蛇行と今年(2017年)の比較」)。

図1: JCOPE2Mよる2017年3月31日の推定値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。海面高度が低いところは海面水温が低いというおおまかな関係があります。赤丸()は八丈島の位置。赤点線は蛇行が大きいという目安となる北緯32度線。

小蛇行1の進行

小蛇行は、その一部が黒潮下流(東)に移動を始め、残りは九州南東にとどまりました。黒潮親潮ウォッチでは、それらを小蛇行1小蛇行2と分けて呼んでいます。小蛇行が2つに分かれたのが今年の特徴です(2017/6/21号「2004年の黒潮大蛇行と今年(2017年)の比較」)。

5月後半(図2)には、小蛇行1は紀伊半島潮岬に達して、潮岬で黒潮が離岸しました。小蛇行1の移動については2017/6/7号「観測で見る小蛇行通過(2017年4月から6月初めまで)」でも解説しています。

図2の時点で、小蛇行1は黒潮大蛇行になる可能性がありました。この予測は、APLコラム「黒潮大蛇行は発生するか?」で解説しています。ただ、この予測では、蛇行が予測通り大きくなっても、黒潮が八丈島の北を流れ、伊豆諸島の西にとどまり、典型的な黒潮大蛇行として長期に続くかは「微妙」と書きました。

図2: 同じく5月25日。

小蛇行1が蛇行1へ

小蛇行1は予測どおり発達し、7月上旬には大きな蛇行になりました(蛇行1, 図3)。ただし、黒潮は八丈島の南を流れるようになり、大きな蛇行が伊豆諸島の西にとどまることはありませんでした。潮岬でも黒潮が接岸に戻りました。この時点で、蛇行1が典型的な大蛇行として長期的に継続する可能性は無くなりました。蛇行1に関する予測の検証は、2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」で解説しています。

蛇行1の一つの影響として、蛇行の東から東海沿岸へ暖水の流入が発生しました(図3)。蛇行時にはこのような暖水の流入が起こりやすく、その影響を2017/9/13号「黒潮大蛇行で浸水被害?」で解説しています。

蛇行1が長期的に継続する可能性が無くなる中、小蛇行2が下流への移動を始め、次の大蛇行につながる可能性が出てきました(図3)。図3では、小蛇行の南に時計回りの渦が存在しており、小蛇行2の反時計回りの渦とペアになっていたのが注目されます。このような渦のペアが存在すると、小蛇行が発達しやすいとされています(2015/4/17「どうして小蛇行が大きく発達すると予測しているの?」)。渦のペアが、その後の小蛇行の発達をうながした可能性があります。

図3: 同じく7月6日。

蛇行2

小蛇行2の進行

小蛇行2は下流への移動を続け、8月には潮岬に達しています。この小蛇行2は潮岬を通過するあたりで急に発達して、蛇行(蛇行2)に成長しています(図4)。小蛇行1の時の図2と比べても、はっきり潮岬の離岸が大きいことがわかります。潮岬の離岸は、これ以降、現在まで続いています。小蛇行2の発達には、2016/8/9号「海山が黒潮大蛇行の引き金になる?」で解説したメカニズムが働いた可能性があります。蛇行2が発達した影響で、和歌山東から東海沖にかけて強い暖水流入が発生しました(図4)。

蛇行2の発達を受けて、典型的な黒潮大蛇行が発生する可能性が高まりました。8月9日号の予測以降、JCOPE2Mは黒潮大蛇行を予測するようになりました。

図4: 同じく8月17日。

蛇行2の発達

蛇行2はさらに発達を続け、8月末には典型的な黒潮大蛇行流路らしくなってきました(図5)。この時点で、気象庁も、大蛇行になる可能性があることを発表しています[3]

蛇行の影響をうけた暖水流入は継続しています(図5)。気象庁の資料でも[4]、紀伊半島東に暖水があり、紀伊半島東岸(熊野)で潮位が高くなっているのがわかります。

蛇行1は小さくなりつつあります。

図5: 同じく5月25日。

黒潮大蛇行へ

1ヶ月後の9月末になっても、大きな蛇行が継続し、潮岬での離岸が続いていることから(図6)、気象庁と海上保安庁は黒潮大蛇行になったと判断しました[1]。黒潮は八丈島の北を通過しており、典型的な大蛇行として、長期に続きやすい流路となっています(図6)。

蛇行の東からの暖水の流入は続いてますが(図6)、図4・5の時ほどではなくなっています。

蛇行1は消滅しています。

図6: 同じく9月28日。

まとめ

最後に、今年1月1日から9月28日までの黒潮の動きをアニメーションでしめします(図7)。上の解説のポイントに注目して、今年の大蛇行につながった黒潮の変化をご覧ください。

図7: 2017年1月1日から9月28日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

  1. [1]黒潮が12年ぶりに大蛇行」(2017/9/29)
  2. [2]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html
  3. [3]黒潮が東海沖で大きく離岸~今後、大蛇行となる可能性があります~」(2017/8/30)
  4. [4]臨時診断表 黒潮が東海沖で大きく離岸」(2017/8/30)

美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。