対馬暖流が強く大雪?(2) 2017年晩秋

日本海が暖かい状況が続いています。これには強い対馬暖流の影響があると考えられます。対馬暖流の強さは日本海側の降雪と関係する可能性があります。

対馬暖流と雪の関係

2017/2/8号対馬暖流が強く大雪?で解説したように、対馬暖流は日本海側の雪に深い関わりがあると考えられています。それを模式図にしたのが図1です。冬になると、大陸から日本に向かって乾いた季節風が吹きます。乾いた風が日本海を越える時に、暖かい日本海からたくさんの水蒸気が蒸発し、水蒸気を大量に含んだ湿った空気になり、雪雲が作られます。この雲雪による雪が、日本海側が世界でも屈指の豪雪地帯になる理由です。対馬暖流は日本海の暖かさを作り出しています。

対馬暖流は日本海の暖かさを維持して日本海側に雪をもたらすだけではなく、対馬暖流の強さの変化によって雪の量が変わるらしいという研究があります[1]対馬暖流が強いことで、日本海がより暖まり、雪につながる水蒸気がより発生するためだと考えられています。

今、日本海は水温がかなり高くなっています。雪が降るかどうかは、大気の状態にもよるため、水温だけで決まるわけではないですが、これから冬に向けて気になるところです。今週は、日本海の状況を見てみましょう。

注:2015/2/20号「黒潮の位置は天気にも影響を与えるの?」などで、黒潮大蛇行の時に東京で雪が降リやすくなるという研究を紹介しています。これは、南岸低気圧という日本列島南岸を発達しながら東に進んでいく低気圧によってもたらされる雪に限定した研究です[2]。一方、対馬暖流の話は、大陸からの寒気によって主に日本海側に降る雪の話です。同じく海が雪に与える話題でも、黒潮大蛇行と対馬暖流が対象としている現象は全く異なります。

Fig1

図1: 対馬暖流が日本海側に雪をもたらすしくみの模式図。2017/2/8号対馬暖流が強く大雪?の図6を再掲。

 

日本海が暖かい

2017年11月12日の、海面水温の平年との差を見たものです[3]。平年は1993から2012年の20年間の平均で、それより高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。

日本海で、平年より高い海面水温が広がっていることがわかります。

Fig2

図2: 2017年11月12日の海面温度の平年(1993年から2012年の平均)との差(℃)。

 

対馬暖流が強い

次に、海流の影響をみるために、天気に影響されやすい海面ではなく、海流の様子が見やすい水深100mの図を見てみます(図3)。

平年の11月12日(図3下)と比較すると、今年の11月12日(図3上)は海面下でも温度が高くなっています。海面下まで水温が高いことが、海面で平年より水温が高いことに寄与していると考えられます。

高い水温に対応して、対馬暖流の流れも平年(図3下)より今年(図3上)のほうが強くなっています。青っぽく長い矢印ほど強い流れです。

Fig3

図3: 上) 2017年11月12日水深100メートルでの温度(色, ℃, 赤線は10℃の)と流れ(色つきの矢印, メートル毎秒, 青っぽいほど強い流れ)。下) 平年(1993年から2012年の平均)の11月12日の温度と流れ。黒点線の領域は図4の計算で使用。

対馬暖流の勢力の急増

対馬暖流の強さをしめす一つの指標として、気象庁は、日本海における深さ100mの水温が10℃以上の領域の面積を計算しています

同様に、図3の黒点線で囲まれた領域での、00mの水温が10℃以上の領域の面積の時間変化を、JCOPEで計算したのが図4赤線です。昨年から平年(黒細線)より大きめでしたが、特にこの3、4ヶ月で急増しています。気象庁の図でも同様の傾向が見られます。

Fig4

図4: 対馬暖流勢力の時間変化(単位104 km2)。赤線が2015年1月から現在までのJCOPEから計算した時系列。黒細線は平年(1993-2012年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。

対馬暖流の増加

対馬暖流の流量も見てみます。図5は対馬暖流の流量です(赤線)。流量もやはり夏ごろから平年よりもかなり大きくなっています。

対馬暖流がなぜ強くなっているのか、対馬暖流の強化がどう水温に影響しているかは今後の研究が必要ですが[4]、日本海で興味深い現象が進行中のようです。

Fig5

図5:  JCOPEから計算した対馬海峡を通過する対馬暖流の月平均流量の時系列(単位106m3/s)。赤線が2015年1月から現在までの時系列。黒線は平年(1993-2012年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。

 

  1. [1]参考文献
    1. Hirose N, Fukudome K (2006) Monitoring the Tsushima Warm Current Improves Seasonal Prediction of the Regional Snowfall Sola 2:61-63 doi:10.2151/sola.2006-016 (英語)

    2. Hirose N, Nishimura K, Yamamoto M (2009) Observational evidence of a warm ocean current preceding a winter teleconnection pattern in the northwestern Pacific Geophys Res Lett 36 doi:10.1029/2009gl037448 (英語)

    3. 広瀬直毅・山本勝・西村和也・福留研一 (2007) 対馬暖流と冬季降水量の関係, 気象研究ノート216: 2005/06年 日本の寒冬・豪雪, 第16章

    4.  日比野 祥・谷口雅洋 (2009), 日本海の貯熱量と冬季降水量, 測候時報第76巻特別号 (pdf)

  2. [2]知って楽しい海の話「南岸低気圧と黒潮」(東京大学海洋アライアンス)も参照。
  3. [3]この記事では、今年の値は1月15日以降の値はJCOPE2Mを、昨年や平年の値はJCOPE2再解析を使用しています
  4. [4]筆者(美山)は科研費基盤(A)「日本周辺の海面水温場が局所的な豪雨・豪雪の予測可能性に与える影響の定量的評価」(中村尚・代表、平成28-31年度)の連携研究者です。

美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。