水温の全体的な状況
まず、日本周辺の水温状況を見てみましょう。図1は、2016年12月4日(2016/12/09号で解説)と2016年1月8日の海面水温の平年との差をJCOPE2再解析のデータを用いて見たものです。平年は1993から2012年の20年平均の平均で、それより高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。
2016/12/09号で解説したように、全体的には、北日本(青の楕円で囲った領域)では平年より温度が低い水温が目立ち、南日本(赤の楕円で囲った領域)では平年より高い水温が目立ちます。全般的に水温が平年よりも低い北日本にも、平年より温度が高い場所が局所的に有り、海流の影響を受けた暖水塊によるものです。10月18日号で解説したように、北海道南東に居座っていた暖水塊(図1上下段のA)は東に移動し解消しつつあります。入れ替わりに、東北沖の暖水塊(図1上下段のB)は北上し、北海道に近づいてきています。
最近の黒潮続流と親潮
海流の影響をよく見るために、2016年12月4日の水深100メートルでの水温と流速を図2左にしめします。比較のために、図2右には、平年(1993から2012年の20年平均)の値をしめします。
2016/07/22号「暴れる黒潮続流」で解説したように、今年の黒潮続流は平年より大きく蛇行していました。そこから切り離された暖水渦(図2左のB)の形で黒潮から流れてきた水が、東北沖の混合水域(2016/11/11号解説参照)に流れこんでいます。それが平年(図2右)より水温が高くなる原因となっています。渦Bは北上して、図1の暖水Bに対応しています。
夏頃に北海道に北海道南東に居座って親潮の岸よりの南下を妨げていた暖水渦は、2016/10/18号で解説したように、東に移動し解消しつつあります(図2左のA)。下の図5のアニメーションも見てみてください。そのために、親潮の位置は平年並み(図2右)に近づいています。
親潮の勢力の指標である親潮の面積(図2の点線領域での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)の時間変化を見ると(図3の赤線)、1年前の2015年は11月から12月にかけて親潮面積が0へと減少したのに対し、現在はほぼ平年並み(図3の黒線)です。図2左のAの渦の移動が予測よりも大きく、先月の予測以上に親潮の面積が回復しています。
しかしながら、これからの予測(図3の青線)を見ると、平年との差は再び開くと予測しています。図2左のBの暖水渦が存在しており、これからの親潮の南下をさまたげると予測されるからです。
親潮面積を各年で比べると、11月は過去3番目の小ささだったのに対し、2016年の12月の月間平均(図4)は、順位はだいぶ下がって過去12番目です。過去最少だった2015年に比べると親潮面積がかなり大きくなっています。
2016年の親潮をアニメーションで
昨年からの親潮の様子をアニメーションにしました。まだ親潮域面積が小さくなかった2016年1月1日から、12月31日までの、親潮域の水深100mの水温(左図)と平年(1993から2012年の平均、右図)を比較しています。暖水渦や、親潮の勢力の指標である水温5度線に注目して見てみてください。
図5: 親潮域の水深100mでの2016年1月1日から12月31日までの水温(左図)と平年(1993から2012年の平均、右図)の比較のアニメーション。親潮域の指標として水温5度に黒太線で等値線をひいてある。データは海洋再解析JCOPE2から。クリックして操作して下さい。途中で停止することもできます。
黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号と2017年2月1日号で解説しています。