2017年11月13日から2018年1月18日の予測(11月17日発表)

黒潮は、東海沖で大きく蛇行しています(黒潮大蛇行)。東海沖の蛇行のために、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています。蛇行の東側から沿岸に黒潮から暖水が入りやすくなっています。四国・足摺岬では離岸しています。黒潮大蛇行は継続するでしょう。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています。ここでは2017年11月13日から2018年1月18日までの予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した11月13日と11月17日の黒潮の状態です。

黒潮は東海沖で大きく離岸しており、黒潮大蛇行と呼ばれる状態になっています[1](図1,2)。大蛇行にともない、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています大蛇行を作っている反時計回りの大冷水渦の北側では、東海沿岸で西向きに暖水が入りやすい状況です[2](図1,2。図8も参照。)。

房総半島沖では黒潮が離れています(離岸傾向x[3]、図1,2)。

四国・足摺岬では、離岸しています(離岸傾向f、図2)。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した11月13日の推測値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 11月17日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5・図6は11月22日・11月29日・12月13日・2018年1月18日の予測です。

東海沖の黒潮大蛇行は成長しながら続きそうです(離岸傾向b, 図3~6)。紀伊半島・潮岬での離岸も継続するでしょう(図3~6)。黒潮大蛇行については次の節で詳しく見ています。

足摺岬では、離岸・接岸しながらも、接岸が基調になると予測しています(図3~6)。室戸岬では、黒潮大蛇行の影響を受けて、離岸する時期が多そうです(図4~6)。房総半島沖では離岸気味の傾向が続きそうです(図3~6)。

図7は、11月13日から2018年1月18日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig3

図3: 11月22日の予測値。

 

Fig4

図4: 11月29日の予測値。

 

Fig5

図5: 12月13日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 

Fig6

図6: 2018年1月18日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 


図7:
 2017年11月13日から2018年1月18日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮の大蛇行は今後どうなるか?

この欄では黒潮大蛇行の今後を検討します。図8下段にしめした図が典型的な黒潮大蛇行になった場合のイメージです。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい(2)紀伊半島・潮岬での離岸(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。特徴をひとつずつ見てみましょう。

蛇行が大きいというのは北緯32度以南(図8の赤点線)まで蛇行するというのが目安です[4]。図8上段と中段11月6日と11月15日に「ひまわり8号」が観測した海面水温です[5]。黒潮は温度の高い帯として見えています。蛇行は、大きい状態が続いています(図8上段、中段)。蛇行の南下はさらに大きくなる可能性があると予測しています(図3~6)。

紀伊半島・潮岬での離岸も続いています(黒潮の温度の水温の高い帯と潮岬が離れている。図8上段、中段)。11月15日の図(図8中段)では潮岬での離岸がはっきりしませんが、串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)が小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[6]。予測でも潮岬での離岸は続きます(図3~図6)。

11月6日(図8上段)の段階では、大冷水渦(塊)が八丈島(図8の)の周りまで広がっており、図8下段のイメージのような典型的黒潮大蛇行の形がくずれ、黒潮が八丈島の南を流れていました。11月15日(図8中段)になると八丈島の周りの冷水は解消され、黒潮が八丈島の北を流れる図8下段のイメージのような典型的黒潮大蛇行に戻ってきました。一般的には、黒潮が八丈島の北を流れたほうが大蛇行が安定するとされています。

黒潮大蛇行は典型的な流路に戻り、年明け以降も続きそうです(図6)。

Fig8

図8:[上段]11月6日に「ひまわり8号」が観測した海面水温。は八丈島の位置。白くなっているところは雲がかかって観測できなかった所。[中段]同じく11月15日。[下段]典型的大蛇行になった場合の流れのイメージ。

 

  1. [1]黒潮大蛇行の記事のまとめはこちら
  2. [2]黒潮大蛇行時の東海沿岸への暖水進入については2017/9/13号「黒潮大蛇行で浸水被害?」を参照。
  3. [3]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字w,y,,が接岸傾向で、青字x,z,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、たとえば離岸傾向bが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。
  4. [4]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html
  5. [5]「ひまわり8号」の海面水温はJAXA提供のデータです。2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照してください。鹿児島県水産技術開発センター和歌山県水産試験場三重県水産研究所からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  6. [6]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。