2017年11月3日から2018年1月4日の予測(11月8日発表)

黒潮は、東海沖で大きく蛇行しています(黒潮大蛇行)。東海沖の蛇行のために、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています。蛇行は東寄りになり、八丈島付近を北上しています。蛇行の東側から沿岸に黒潮から暖水が入りやすくなっています。四国・足摺岬ではやや離岸しています。黒潮大蛇行は継続するでしょう。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています。ここでは2017年11月3日から2018年1月4日までの予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した11月3日と11月8日の黒潮の状態です。

黒潮は東海沖で大きく離岸しており、黒潮大蛇行と呼ばれる状態になっています[1](図1,2)。大蛇行にともない、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています大蛇行を作っている反時計回りの大冷水渦の北側では、東海沿岸で西向きに暖水が入りやすい状況です[2](図1,2。図8も参照。)。蛇行は東寄りになり、黒潮は八丈島付近()を北上しています(図1,2)。黒潮の一部は、八丈島の南から東に流れているようです(図1。図8も参照)。

房総半島沖では黒潮が離れています(離岸傾向v,x[3]、図1,2)。

四国・足摺岬では、やや離岸しています(離岸傾向f、図2)。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した11月3日の推測値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 11月8日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5・図6は11月15日・11月22日・12月6日・2018年1月4日の予測です。

東海沖の黒潮大蛇行は成長しながら続きそうです(離岸傾向b, 図3~6)。紀伊半島・潮岬での離岸も継続するでしょう(図3~6)。八丈島付近では黒潮の一部が八丈島の南を流れる時期があります(図5)。黒潮大蛇行については次の節で詳しく見ています。

室戸岬では黒潮がいったん接岸しますが(図3)、大蛇行の規模が大きくなるにつれて再び離岸する可能性があります(図4~6)。足摺岬でも大きく離岸する可能性があります(図6)。房総半島沖では離岸傾向が続きそうです(図3~6)。

図7は、11月3日から2018年1月4日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig3

図3: 11月15日の予測値。

 

Fig4

図4: 11月22日の予測値。

 

Fig5

図5: 12月6日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 

Fig6

図6: 2018年1月4日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 


図7:
 2017年11月3日から2018年1月4日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮の大蛇行は今後どうなるか?

この欄では黒潮大蛇行の今後を検討します。図8下段にしめした図が典型的な黒潮大蛇行になった場合のイメージです。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい(2)紀伊半島・潮岬での離岸(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。特徴をひとつずつ見てみましょう。

蛇行が大きいというのは北緯32度以南(図8の赤点線)まで蛇行するというのが目安です[4]。図8上段と中段は10月30日と11月6日に「ひまわり8号」が観測した海面水温です[5]。黒潮は温度の高い帯として見えています。蛇行の南下は10月30日よりも11月6日のほうが大きくなっています(図1,2の離岸傾向bに対応)[6]。蛇行の南下はさらに大きくなると予測しています(図3~6)。

紀伊半島・潮岬での離岸も、10月30日より11月6日のほうがはっきりしています(黒潮の温度の水温の高い帯と潮岬が離れている。図8上段、中段)。予測でも、潮岬での離岸は続きます(図3~図6)。

一方で大蛇行は東寄りになり、冷水渦(塊)が八丈島(図8の)の周りまで広がっています(図8上・中段)。このことから、図8下段のイメージのような典型的黒潮大蛇行とは違い、黒潮が八丈島の南を流れているようです。一般的には黒潮が八丈島の北を流れたほうが大蛇行が安定するとされていますが、黒潮が八丈島の南をひんぱんに流れながらも続いた1981~1984年の大蛇行という例外もあります[7]

大蛇行の終わりの始まりなのか、予測通り大蛇行が続くのか、興味深い状況になってきました。

Fig8

図8:[上段]10月30日に「ひまわり8号」が観測した海面水温。は八丈島の位置。白くなっているところは雲がかかって観測できなかった所。[中段]同じく11月6日。[下段]典型的大蛇行になった場合の流れのイメージ。

 

  1. [1]黒潮大蛇行の記事のまとめはこちら
  2. [2]黒潮大蛇行時の東海沿岸への暖水進入については2017/9/13号「黒潮大蛇行で浸水被害?」を参照。
  3. [3]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字w,y,が接岸傾向で、青字v,x,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、たとえば離岸傾向xが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。
  4. [4]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html
  5. [5]「ひまわり8号」の海面水温はJAXA提供のデータです。2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照してください。鹿児島県水産技術開発センター和歌山県水産試験場三重県水産研究所からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  6. [6]2017/11/9追記: 海上保安庁は黒潮の流路が更に南下(11月3日観測)という発表をしています(2017/11/9, pdf)。
  7. [7]黒潮の流路と流量の変動に関する研究(川辺正樹, 2008)には、「ただし、八丈島の南を通過する割合がほぼ半分を占めた1981-84年の大蛇行のような例外もある。」という記述があります。


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。