2019年4月の予測を検証します

毎月、過去1カ月の予測を検証しています[1]。予測通り、黒潮大蛇行が続いています。

予測と実際(長期予測)

今回は4月3日号の、3月26日から予測した4月19日までの結果を検証します。4月3日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。

図1左は、3月26日から予測した4月19日の黒潮の状態です。図1右は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる4月19日の状態です。図2は、同じく予測値(左)と実際(右)の比較を、3月26日から4月19日までのアニメーションにしたものです。

3月26日の予測(図1左)は、実際(図1右)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸していること、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置することを予測できていました。伊豆諸島付近では八丈島の北を流れる流路が続くと予測しており、それも当たっていました。ただし、大蛇行の東の時計回りの暖水渦(図1左、A)を過大評価していました。

4月3日号の予測では、九州東で離岸(小蛇行)が大きくなる可能性があると予測していました(左)。実際(右)にも九州南東にそのような傾向がありますが(短期予測も参照)、予測は大きすぎ、その影響で九州南岸の接岸・離岸の様子が予測と実際で異なっています。

Fig1

図1: [左]3月26日から予測した4月19日の予測値。[右]観測値を取り入れて推測した4月19日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。

 


図2: 3月26日から4月19日までの予測(左)と実際(右)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ(長期予測)

大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2018/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。

図3の点線は、4月3日号の3月26日からの予測による冷水面積の変化です。4月の間は横ばいを予測していました。実際(黒線)、ほぼ横ばいでした。渦の強さが保たれていることで、黒潮大蛇行が長引きそうな状態です。

黒潮大蛇行が2017年8月末に始まってから約1年8か月たっており、1つ前2004-2005年(約1年2か月)、2つ前1989-1990年(約1年1か月)より長くなっており、さらに3つ前1986-1988年(約1年8か月)も越えることになります(過去の黒潮大蛇行については「黒潮大蛇行の歴史」参照)。これより長い大蛇行は1981-1984年(約2年7か月)までさかのぼります。

Fig2

図3: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)の1日毎の時系列で黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した実際の値(解析値)。点線が3月26日から4月19日までの予測。参考のために前回の大蛇行が終了した2005年の時の時間変化を薄い線で重ねた。

予測と実際(短期予測)

今回は4月14日から予測した4月21日の予測を検証します。図4上段は、4月14日から予測した4月21日の黒潮の状態です(1日平均)。図4下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる4月21日の状態です。

房総半島の南での黒潮の離岸がうまく予測できていなかったようです。

Fig4

図4: [上段]4月14日から予測した4月21日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した4月21日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。青●は八丈島の位置。

  1. [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。