2019/6/8放送・NHK ブラタモリ 「銚子~銚子はなぜ日本一の漁港になった?~」(放送後追記あり)

6月8日放送のブラタモリ 銚子編の取材に協力しました。ぜひご覧ください。

番組名 ブラタモリ #136 「銚子~銚子はなぜ日本一の漁港になった?~」
放送日時
放送局 NHK 総合
内容 水揚げ量8年連続日本一!千葉県・銚子漁港に全国の漁船が集まる秘密をタモリさんが解き明かす!
番組サイト https://www4.nhk.or.jp/buratamori/x/2019-06-08/21/17722/2009136/

ブラタモリは伊豆・下田編でも取材協力しています。


番組後追記

取材では、黒潮と親潮の位置の概念図として図1にあたる図を提供しました。

黒潮は銚子付近で本州を離れ、黒潮続流として太平洋を東に流れます(「黒潮の続き、黒潮続流」)。一方、親潮は北海道沿岸から東北北部沿岸を流れた後、太平洋を東に流れるようになります(詳しくは「親潮はどんな流路になっているの?」)。図1のように、親潮と黒潮(その続きとしての黒潮続流)の本流が直接ぶつかることはまれで、黒潮と親潮の中間では親潮から来た水と黒潮から来た水が混じりあっています。その様子は図1では点線で表現されています。この海域は混合水域と呼ばれています(「親潮と黒潮の間・混合水域」)[1]。混合水域は点線のような海流が一定して有るわけではなく、変化にとんでいます。時には親潮や黒潮からつながった海流というよりも、ちぎれた渦のようになっていることもしばしばです。その様子は毎月親潮ウォッチでお知らせしています。

番組でも紹介されていたように、混合水域は栄養が豊富な親潮の水と水温の暖かい黒潮の水が混じるためにプランクトンが発生しやすく、世界でも有数な漁場となっています[2]

なぜ黒潮は銚子付近で岸を離れ、黒潮続流として太平洋を東に進み、親潮本流と直接ぶつからないのかは、海洋学の興味深いテーマです。黒潮の動力源となっている太平洋の風の配置や、黒潮の速さ、地形などが関係していると考えらます[3]

黒潮続流の位置は、生態系・漁業にとって重要なだけでなく、気候にも大きな役割を果たしていると考えられています[4]。そのために、黒潮続流の位置の予測はアプリケーションラボの重要な研究テーマの一つになっています(「黒潮はどれくらい先まで予測できるのでしょう?」)。

fig1

図1: 番組で使用された図に相当する黒潮[ref]この図では黒潮は大蛇行していますが、今回の話の内容には関係ありません。[/ref]・親潮の位置の概念図。


これまでの取材協力の一覧はこちら

  1. [1]気象庁の解説も参照。
  2. [2]東北沖の生態系については、海洋研究開発機構の東北マリンサイエンス拠点形成事業もご参照ください。
  3. [3]番組の取材に対しては、気象研の中野さん等の研究をもとに離岸の位置を決めている主要な要因は風の配置ではないかと答えています。

    Nakano, H., H. Tsujino, and R. Furue, 2008: The Kuroshio Current System as a jet and twin “relative” recirculation gyres embedded in the Sverdrup circulation. Dyn. Atmos. Oceans, 45, 135-164, doi:10.1016/j.dynatmoce.2007.09.002.
    日本語で読めるものとしては、岡田賞受賞記念論文:海洋大循環モデルを用いた中・深層を中心とする海洋循環場の研究(中野英之, 海の研究 2009)の4.2章。

    ただし、上記英語論文のFig. 21に地形を意識した実験の図があり、その説明(page 161)の”The oscillation of the separation point described in Sections 3.2 and 3.4.1 does not exist in A6a or A6b (not shown),”という記述があり、地形は風で決まる黒潮離岸の位置を安定させる効果はあるかもしれないとも答えています。

  4. [4]たとえば「日本東岸沖の海と大気は10年で変わる 〜その原因は黒潮続流にあり!?〜」(気候系のHot Spot・太平洋十年変動ワーキンググループ)