更新日:2021/07/05

観測

日本南方黒潮域

2021年5月24日-6月1日に実施
新青丸KS-21-9航海 研究課題名「黒潮大蛇行が亜熱帯モード水の形成・移流ならびに遠州灘沿岸域の海象・気象に与える影響」主席研究員:西川はつみ

新青丸KS-21-9次航海が2021年5月24日から6月1日まで,熊野灘~遠州灘海域および黒潮南方海域で行われました。

2017年8月から始まった黒潮大蛇行は2021年6月現在も続いており,観測史上2番目の継続期間となっています。黒潮大蛇行に伴い発生する黒潮分岐流は,東海・関東地方の沿岸域に暖水を運ぶことで,漁業だけでなく沿岸域の気象にも大きく影響することが明らかになってきました(Sugimoto et al., 2021など)。しかし,分岐流の海洋構造やその直上の大気構造の観測が少ないのが現状です。

この航海前半では,黒潮分岐流の海洋構造および直上の大気構造の詳細を捉えるための高頻度観測を行いました。5月24日にJAMSTEC横須賀本部岸壁から出港し,深夜から早速観測開始です。まずは分岐流の海水特性を詳細に調べるために,CTD採水観測を行いました。25日お昼ごろからは,1時間毎のXCTD観測と2時間毎のラジオゾンデ観測を行いながら,約2日間かけて分岐流の南北断面3測線を高解像度に観測しました。

東海地方より西の地域はすでに梅雨入りしていたため天候が心配でしたが,海況は良く順調に観測が進みました。低気圧が接近し波が高くなる場面もありましたが,無事に予定していた分岐流観測を終えることができました。後半の四国沖での亜熱帯モード水をターゲットとしたXCTD・CTD観測や黒潮を横断しながらのラジオゾンデ観測も順調に終わったため,分岐流のXCTD観測を追加で行い,新宮港へ入港しました。

分岐流がどのような構造をしていて,どれくらい黒潮の水を沿岸域へ運んでいるのか。船上で感じた『黒潮上ではムワッ暑く,冷水域では肌寒く,分岐流上はやや暖かい?』という体感が,観測データでどのように見えているのか。今後の解析結果が楽しみで仕方ありません。

KS-21-9次航海航路図。▲がXCTD測点,●はラジオゾンデ測点,〇はCTD測点。コンターは5/25の海面高度。カラーは5/25の海面水温の平年値からの偏差(℃)。

CTD観測(左)と採水(右)の様子

XCTD観測のオペレータ(左)と投入(右)の様子

ラジオゾンデ観測の手放球の様子

ラジオゾンデ観測のコンテナ放球の様子 [動画]

穏やかな海と朝日

今回乗船した,新宮に停泊中の新青丸

分岐流上 (左:X006) と黒潮上 (右:X038) でのXCTD観測例。青が塩分,赤が水温,黒が密度を示す。分岐流の表層には,黒潮由来と考えられる高塩分な海水が見える。

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西川 はつみ(東京大学 大気海洋研究所)・川合義美(海洋研究開発機構)