更新日:2021/08/02

観測

北海道南東方沖

2022年7月19日-8月2日に実施
夏季西部北太平洋域での航空機観測・船舶同時観測: 航空機編

2022年7-8月に、北海道東方沖において、航空機(ダイヤモンドエアサービスのKing Air)と船舶(新青丸)からエアロゾルと雲の同期観測を実施しました。この観測はA02-4班が中心となり、A02-5班、A02-7班、および公募研究5と連携して実施しました。

夏季の北太平洋の下層雲は大きな放射効果(負の雲放射強制力)があり、地球全体の放射収支の観点からも重要なものとなっています。また特に西部の北太平洋の下層雲は、海洋起源のエアロゾルとともに、アジアの人為起源エアロゾルの影響も受けていると考えられます。このような背景から本観測は、放射収支に重要な夏季の西部北太平洋の下層雲の特徴と、雲に影響を与える海洋起源や人為起源エアロゾルの動態を明らかにするために実施されました。そして同海域では初めてとなる、エアロゾルと雲に関わる様々な観測を航空機と船舶から同期して実施し、貴重なデータを得ることに成功しました。観測では、船舶に海表面温度(SST)やクロロフィルa濃度が異なるS1あるいはS2のどちらかに観測をしながら待ち受けてもらい、観測機がそこに飛行していくことにより、7回の同時観測を実現しました。

船舶からの観測については、別の記事に紹介記事があるため、ここでは航空機観測についてもう少し説明します。観測機としては、ダイヤモンドエアサービス(DAS)のKing Airという機体を用いました。1か月くらいかけて機器の搭載、地上試験、試験飛行を実施した後、北海道の女満別空港を拠点として8回の観測飛行を実施しました。観測期間中は、さまざまな気象状況の中で形成される下層雲の雲微物理量の高度分布を数多く観測し、また雲頂直下や雲底直上での水平飛行観測も実施しました。これらの観測から、同領域の雲層厚、雲水量、雲粒数濃度などの雲微物理量の基本的な描像や、エアロゾル数濃度との対応関係が明らかになりつつあります。また固体エアロゾル数濃度、氷晶核数濃度、ブラックカーボン・エアロゾル濃度、エアロゾル化学組成など、様々なエアロゾルの濃度や変動も調べられています。

最後に、本観測の成功のために協力いただいた全ての参加者、気象支援チーム、そしてDASの皆さんに、改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。

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小池真(東京大学)