今年の夏は予測通り、平年に比べ極めて暑い夏となりました(季節ウォッチ5月号、JAMSTECコラムなど)。夏の強い日差しを浴びて、横浜研究所では朝顔が元気よく咲いています(写真)。これから季節は秋に移りますが、日本を含む世界の天候が気になりますね。
SINTEX-Fの季節予測によると、今年の9月から11月は、世界の多くの地域で気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アフリカ南部やチベットなど一部の地域では気温が平年より低くなりそうです。
また、ヨーロッパ北部やアラスカ、カナダ西部/東部、アメリカ中部、西アフリカ、東アフリカでは雨が平年より多く、インドネシア、オーストラリア、インド、東南アジア、フィリピン、韓国、ヨーロッパ東部、アメリカ北西部/南東部、ブラジル東部では、雨が少なくなる見込みです。
原因の1つとして挙げられる熱帯域の気候変動現象ですが、太平洋ではエルニーニョ/エルニーニョもどき現象が発達し、インド洋では 正のインド洋ダイポール現象がピークを迎えそうです。このため、インド洋東部から海洋大陸にかけて対流活動が弱まり、特にインドネシアやオーストラリアでは雨が平年より少なくなる恐れがあります。
今年の9月から11月までの気温と降水量は?
今年の9月から11月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アフリカ南部やチベットなど一部の地域では、気温が平年より低くなる見込みです(図1)。
次に、今年の9月から11月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。 SINTEX-Fの予測によると、ヨーロッパ北部やアラスカ、カナダ西部/東部、アメリカ中部、西アフリカ、東アフリカでは、雨が平年より多くなる見込みです(図2)。一方で、インドネシア、オーストラリア、インド、東南アジア、フィリピン、韓国、ヨーロッパ東部、アメリカ北西部/南東部、ブラジル東部では、雨が平年より少ない予測となっています。
また、日本の秋は、気温が平年より高くなりそうです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の予測情報に注意してください。
今年の9月から11月までの海面水温は?
日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな海面水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。
SINTEX-Fの予測によると、今年の9月から11月まで太平洋の熱帯域は、中央部から東部で海面水温が平年に比べて高くなる、エルニーニョ現象が発達する見込みです(図3)。特に、このエルニーニョ現象は、熱帯域の中央部で海面水温がより高くなることから、エルニーニョもどき現象に近いと言えます。
一方、インド洋の熱帯域は、西部で海面水温が平年より高く、東部で水温が低くなる、正のインド洋ダイポール現象 が発達する見込みです。これら2つの現象が同時に発生した年は、過去に1994年(エルニーニョもどき現象)、1997年や2015年(エルニーニョ現象)があります。
それでは、これら熱帯域の気候変動現象が今後どのように発達していくのでしょうか?そこで、海面水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海面水温の平年差を見てみましょう。エルニーニョ指数を見ると(図4上段)、今年の8月から9月にかけて、エルニーニョ発生の目安となる0.5度を上回り、年末に向かって発達し、年明けにピークを迎えた後、少しずつ弱まる予測となっています。エルニーニョ現象の発達は、他の研究機関の予測結果でも見られます(IRI ENSO Forecast)。また、エルニーニョもどき指数を見ると(図4中段)、年末に向かって発達し、来年の春に0.5度付近でピークを迎えた後、少しずつ弱まる予測となっています。一方、インド洋ダイポール現象の指数を見ると(図4下段)、8月には0.5度を超えて、秋にピークを迎えた後、次第に弱まっていく予測となっています。
日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ/エルニーニョもどき現象だけでなく、インド洋に発生するインド洋ダイポール現象なども大きく影響を及ぼすことが分かっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきましょう。