2020年2月号:春の陽気

写真:海洋科学会議が行われた米国サンディエゴ会議場

2年に1度行われる海洋科学会議のため、米国サンディエゴを訪問してきました(写真)。熊本とほぼ同じ緯度ですが、日中は気温が20度近くまで上がり、日本の春のような陽気でした。私たちの研究所がある横浜も梅が咲き誇り、河津桜が満開となり、春がもうすぐそこまでやって来ている気がします。これからの季節、日本を含む世界の天候が気になりますね。

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の3月から5月は、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アメリカ東部やブラジル東部では、気温が平年より低くなる見込みです。

また、アメリカ東部、ブラジル東部、東アフリカなどでは雨が平年より多く、アメリカ西部やブラジル北部、東南アジア、フィリピン、インドネシア、オーストラリアなどでは、雨が少なくなる見込みです。

原因の1つとして、熱帯域の気候変動現象が挙げられます。太平洋では、中央部で海面水温が平年に比べて高くなる、エルニーニョもどき現象に似た状況が徐々に減衰していく見込みです。一方、インド洋では、海盆全体で海面水温が平年よりわずかに高い状態が続く見込みです。

今年の3月から5月までの気温と降水量は?

図1 2020年3月から5月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は2月1日。

今年の3月から5月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アメリカ東部やブラジル東部では、気温が平年より低くなる見込みです(図1)。

図2 2019年3月から5月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は2月1日。

次に、今年の3月から5月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。 SINTEX-Fの予測によると、アメリカ東部、ブラジル東部、東アフリカなどでは、雨が平年より多くなる見込みです(図2)。一方で、アメリカ西部やブラジル北部、東南アジア、フィリピン、インドネシア、オーストラリアなどでは、雨が平年より少ない予測となっています。

また、日本の春は気温が平年より高くなりそうです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の予測情報に注意してください。

今年の3月から5月までの海面水温は?

図3 2020年3月から5月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は2月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな海面水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

SINTEX-Fの予測によると、今年の3月から5月までの太平洋の熱帯域は、中央部から西部にかけて海面水温が平年に比べてわずかに高くなる見込みです(図3)。これは、昨年の冬まで発生していたエルニーニョもどき現象が徐々に減衰していく様子を表しています。一方、インド洋の熱帯域は、昨年の夏から秋にかけて発生した正のインド洋ダイポール現象が終息し、海盆全体で海面水温が平年よりわずかに高くなる見込みです。

図4 2020年2月以降に予測される、エルニーニョもどき指数およびインド洋ダイポール指数(ºC)。予測開始日は2月1日。黒線が観測値、その他のカラーの細線と太線が異なる季節予測システムで計算した予測値とその平均値を表す。

それでは、これら熱帯域の気候変動現象が今後どのように発達、衰退していくのでしょうか?そこで、海面水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海面水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョもどき指数を見ると(図4上段)、昨年の冬まで発生していたエルニーニョもどき現象が春から夏にかけて減衰し、平年並みの状況に戻る予測となっています。

一方、インド洋の気候変動現象ですが、インド洋ダイポール現象の指数を見ると(図4下段)、昨年の秋に2℃を超えるほど強く発達していた正のインド洋ダイポール現象が冬に減衰して終息しましたが、今年の夏から秋にかけて再び発達する予測となっています。ただし、予測値のばらつきが大きいため、今後の予測情報に注意してください。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなくエルニーニョ・ラニーニャもどき現象や、インド洋に発生するインド洋ダイポール現象なども、大きく影響を及ぼすことが分かっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきましょう。