2020年5月号:今年の夏の天候は?

写真:初夏の日差しですくすく育つバジル

5月に入り、初夏の陽気になりました。暖かい日差しをたっぷりと受け、バジルがすくすく育っています(写真)。これから季節が夏に変わりますが、日本を含む世界の天候が気になりますね。

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の6月から8月は、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。

また、東南アジアやインド、中国東部、朝鮮半島などでは雨が平年より多く、アメリカ中部やカリフォルニア、南米の北部、西アフリカなどでは、雨が少なくなる見込みです。

原因の1つとして、熱帯域の気候変動現象が挙げられます。太平洋では海面水温が平年並みとなる見込みですが、インド洋では西部に比べて東部で海面水温が平年より高い状態が続き、弱い負のインド洋ダイポール現象が発達する見込みです。

今年の6月から8月までの気温と降水量は?

図1 2020年6月から8月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は5月1日。

今年の6月から8月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです(図1)。

図2 2020年6月から8月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は5月1日。

次に、今年の6月から8月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。 SINTEX-Fの予測によると、インドネシアやフィリピンを含む東南アジア、インド、中国東部、朝鮮半島などでは雨が平年より多くなる見込みです(図2)。一方で、アメリカ中部やカリフォルニア、南米の北部、西アフリカなどでは、雨が平年より少ない予測となっています。

また、日本の夏は気温が平年より高く、雨が多くなりそうです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の予測情報に注意してください。

今年の6月から8月までの海面水温は?

図3 2020年6月から8月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は5月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな海面水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

SINTEX-Fの予測によると、今年の6月から8月までの太平洋の熱帯域は、海面水温が平年並みとなる見込みです(図3)。一方、インド洋の熱帯域は、海面水温が平年より高くなり、西部に比べて東部でより高くなる見込みです。これは、弱い負のインド洋ダイポール現象が発達することを予測しています。負のインド洋ダイポール現象が発達すれば、2016年以来の4年ぶりとなります(コラム「今夏、インド洋に負のダイポールモード現象が発生か?」)。

図4 2020年5月以降に予測される、エルニーニョ指数、エルニーニョもどき指数およびインド洋ダイポール指数(ºC)。予測開始日は5月1日。黒線が観測値、その他のカラーの細線と太線が異なる季節予測システムで計算した予測値とその平均値を表す。

それでは、これら熱帯域の気候変動現象が今後どのように発達、衰退していくのでしょうか?そこで、海面水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海面水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョ指数(図4上段)やエルニーニョもどき指数(図4中段)を見ると、昨年の冬まで発生していたエルニーニョもどき現象が春にかけて減衰し、夏には平年並みの状況に戻る予測となっています。

一方、インド洋の気候変動現象ですが、インド洋ダイポール現象の指数を見ると(図4下段)、昨年の秋に2℃を超えるほど強く発達していた正のインド洋ダイポール現象が冬に減衰して終息しましたが、今年の夏から秋にかけてマイナス0.5度付近まで下がり、弱い負のインド洋ダイポール現象が発達する予測となっています。ただし、予測値のばらつきが大きいため、今後の予測情報に注意してください。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなく、インド洋に発生するインド洋ダイポール現象なども、大きく影響を及ぼすことが分かっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきましょう。